mさん

ラストレターのmさんのネタバレレビュー・内容・結末

ラストレター(2020年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

岩井さんの映画は初めてだったけど、
やっぱり単純に少し苦しめの青春要素だけだと
退屈してしまって自分には合わないんだということがわかった。

前半は松たか子さんや福山雅治さん達が過去の恋愛に囚われたままで苦しさを抱えてて、
見てて辛くもあるんだけど
同時に庵野さんと松たか子さんの
夫婦のコメディとか、
広瀬すずを中心とする子供立ちの
無邪気な明るさがあって面白かったけど、
福山雅治さんがメインになりだす中盤から
ゆったりと過去に囚われた苦しさだけが続く。
更に物語も虐待を受けたとか、ひどい夫が出てきたりして話がどんどん暗くなるから、
前半のテイストを期待してたので少し残念だった。

所々MVっぽいなと思った。福山雅治と松たか子さんが初めて会うバス停のシーンのカメラの動きとか、照明とかなんかMVぽいなと思った。自然というよりかはロマンチック感強めみたいな。

ストーリーへの疑問を回収してくれる部分が
所々あってよかった。例えば、
松たか子が初め福山雅治に
手紙を書き続けちゃうのは
昔好きだったからとか

手紙で裕里には悪いことをしたって
福山雅治が言ってるのはどういうことなのかとか
手紙を隠してたら悪いことをされてるじゃん
と思ったら、裕里の告白を振っていたと言うことがわかったりとか
そういうのがあったから興味が持続した

狙ってないと思うけど
パラレルワールドの面白さがあった。
現代と過去で全く違う役柄で広瀬すずと森七菜が出てるのが新鮮で、過去の方では広瀬すずが森七菜の姉だけど、現代ではそう言う関係じゃなくて
全く同じ2人に見えるのに関係性が全然違くて、むしろ現代では広瀬すずの方を森七菜が支てていいなと思った。

人は過去に囚われてしまう。
昔はよかったなというノスタルジーや、あの時ああしてたらという後悔など様々だけど、そこだけで終わって今どうするかが見えない作品はそこまで響かない。この作品も途中まではずっと過去のことを引きずって現代の行動が左右されちゃう人たちばかりで、うーんって感じだった。

だけどこの作品が特殊なのは
今の状況があまりにも絶望的で
過去に囚われていた人が
自死したという設定だと思う。

この亡くなった設定があるから
過去を想って自死した彼女を忘れないでほしいと思ったり、生きてるからこそ過去にすがりたいと思えるんだよなとおもったり、そういう自死したという設定が+1されたから
福山雅治や松たか子さん達が
過去を軸にして今を生きてたのも
いいのかもと思えてしまった。
福山雅治が過去に囚われたからこそ
あの小説は書けたんだし、
あの小説があるからこそ
美咲の存在が娘や、いとこや、下の世代に繋がっていくし、そういう意味ではやっぱり過去に囚われるのもいいのかもと思った。

そもそも手紙とか小説とか
文字とかカメラとかって
過去を記録するもので
それを見て
いや今を見ろよとは思わないから
過去を想い続けることを色んな
アプローチで肯定的に描こうとしてるのかなと思ったり

最終的にはそれぞれが踏ん切りをつけて
今に向かっていく感じもあった。
けどなんかそれは上のテーマだって解釈するならいらなくねと思ったりもする。

あと自死したという設定が松たか子さんの口からポンと語られただけだったので、ご都合主義感が少ししてしまった。物語が悲しくなっちゃうじゃん!と冷静に思ってしまった。

基本的に自分の心情をめっちゃ語っていくのはこの人の個性なのか、どちらかというと自分は
森七菜の告白シーンや、福山雅治のセリフっぽくない素の反応みたいなのがすごく好きだった。
逆に松たか子の振り切ったコメディな
言い方も好きだった。

福山雅治のパッとしない男感がすごい。
しっかりと風格もそうしてるし、
声とかポーズとかも全然自信がない感じが
すごいと思った。
mさん

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