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ラストレターのcoroのレビュー・感想・評価

ラストレター(2020年製作の映画)
3.7
もの静かな川べりにそっと浮かぶ哀しみや煌めき、そんな思春期のひとかけらを映しとるのがやっぱり巧い。"Love Letter"と比べるとやや凡庸さを感じるけれど、それでも、想いをしたためたすべての手紙を美しいと感じさせてくれる不思議な魅力がある。

海街diary"の千佳(夏帆)のように、周りの人たちの怒りや悲しみをさり気なく受け止めて緩和してくれる裕里の存在が大きい。千佳と違うのは自身が知らないうちにコンセントになっているということ。ものごとを余り深く考えず軽はずみな行動をとってしまいながら、そこから生まれてくる災をいつも幸せに変えてくれる。そんな裕里を演じる松たか子と森七菜の調律の精度の高さと広瀬すずという存在が、違和感なく私たちをあの夏へと誘ってくれる。








以下ネタバレになるかも

廃校舎の窓越しに突如として現れる、幻と見紛うような景色。我が目を疑いながらも色を失わないよう思わずあとを追う乙坂(福山雅治)。ここから始まる淡いロマンティックな画が好き。純粋な眼差しに見守られながら開く質素な宝箱の造形も好き。中身を知っているはずなのに、思わず涙してしまう人たちも好き。




以下ネタバレ

それぞれの想いが詰まったそれぞれのラストレター。文通の書き終わりに添える名前のように、私小説(手紙)の最後に書き足されるサイン。表には美咲、美咲の中の僕。オープニングのもの悲しい俯瞰図はエンディングでは心に残る印象的な風景へと姿を変える

それにしても、"Love Letter"のふたりにあんな役を演じさせるなんて…
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