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永遠の門 ゴッホの見た未来のkanegon69のレビュー・感想・評価

4.0
この映画はゴッホの一生・半生を描こうとしたわけではない。主に最期の2年にフォーカスして、ゴッホという主観、ゴッホの視点、ゴッホの思いを中心に描いている。従って、映像も所々、ゴッホの見ている景色になる。非常に面白い作りをしていたと思います。ストーリーとしては、ゴッホの死に関する解釈として、他殺説を堂々と採用した点でしょうか。ひょっとして諸説があることを知らない方が見たらびっくりするかもしれません。

この映画は、画家であり、映画監督でもあるジュリアン・シュナーベルが、脚本家と一緒にオルセー美術館のゴッホの企画展に行ったことがきっかけだそうです。自分の得た着想、感情を映画を観る聴衆にも伝えたい、そんな思いだったそうです。

また、画家でもあるこの監督は、映画中に出てくるゴッホの模作をかなりうまく製作している点に驚く。そして、主役のウィリアム・デフォーに徹底的に絵画制作の指導を行うことで、ゴッホが絵を描くシーンにそこはかとないリアリティを生んでいる。

主役のウィリアム・デフォーは、ともかくこの映画でなんといっても光りまくっていましたね。彼にまるでゴッホが乗り移ったような感覚にさえなります。苦汁の表情、テオに子供のように甘える表情、自分が何をしでかしたか分からない困惑した表情、侮辱に耐える表情、貧困に苦しむ表情、親友に会えた時の喜びの表情、自然と向き合っている時の澄んだ表情、、アップの映像が多い中、非常にうまく演じていたと思います。まさに、ウィリアム・デフォーの独壇場です。

ゴッホファンにとっては必見の映画。もしあなたが、ハッピーエンドや、ドラマティックな展開、ほっこりしたいのならやめておいた方がいいでしょう。

感じたのは、画家でもある映画監督が、名優とともに、ゴッホというかの天才の最期の2年を、独自解釈により主人公の視点に徹して描いた映画であるということでしょうか。(ゴッホの伝記でもありません)

ウィリアム・デフォーはこれで4度目のオスカー候補だそうです。
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