三樹夫

恐怖の報酬 オリジナル完全版の三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

4人のならず者が一攫千金を狙いトラックでニトログリセリンを運ぶ。
まず4人がどういった人間なのか、どうして自分の国から高飛びせざるを得なかったのかということが描かれる。いきなり何の説明もなく各々の状況が描かれていくので戸惑うが、毎回爆発やカークラッシュなどを挿入する律義かつ脳筋なやり方がカバーしていると思う。後、教会の新婦の顔に青あざがあるという変な殺伐感。
そして次に4人が集結する中南米にある町が描かれるが、ここからとんでもないボルテージの高まりを見せる。とにかく汚い、荒れている。軍事独裁政権下にあり、軍人が幅を利かせてウロチョロし、市民は全員貧乏というのはもはや当然で、羽のついたカヌー以下の空飛ぶ鉄くずみたいなオンボロの飛行機や、動くことが奇跡みたいなボロボロのタクシーなど世紀末感満載な描写が、時間で計測していなかったのではっきりとは分からないが、おそらく40分ぐらい続く。凄まじく乾いて殺伐としたものがスクリーンの中に広がっていた。働いても小銭程度の金しか貯まらず、さらに主人公は軍人に目を付けられ稼ぎのいくらかをかすめ取られるという所に、油田が爆発。本社から現場責任者への通達のクソっぷりと丸投げっぷりも殺伐度をさらに高める。爆発で炎を消す以外に消火の方法はなく、200マイル離れた倉庫からニトログリセリンをトラックで運ぶ運転手に大金が支払われるというので4人が立候補し、そこから抜け出すためにならず者たちの命を懸けた恐怖の運送業務が始まるという超絶熱い展開、ここまで約1時間。
運送用にこれまたボロボロのトラック2台を整備していくのだが、どんどん整備している所にタバコ吸ってるロイ・シャイダーのアップが挿入され、最終的に暗闇の中スモークたいてトラックのライトが1つずつ点いていくという、謎の勢いとカッコよさと戸惑いが同居する印象的なシーンで、命がけの任務の前にさらにボルテージが高まる。俺はコマンドーでシュワがカヌーで上陸してベネットのとこに殴り込みに行くときの装備シーンを思い出した。
ニトログリセリンはちょっとした衝撃でも爆発してしまうので注意を要する。倉庫に爆薬を探しに行ったシーンで、ニトログリセリンの爆発シーンを事前に見せているので、運送時のちょっとした衝撃でも爆発してしまうというサスペンスが高まっている。ただ運送時に最もサスペンスを高める要素はボロボロの橋や吊り橋という、爆発するというよりも転落するというサスペンスでハラハラさせる。あんなもんはニトログリセリンを積んでなくても危ないわ。ボロボロの吊り橋を渡るときのサスペンスたるや、既に高まったボルテージを超えてくる凄まじいボルテージの高まりがある。さらに暴風雨で大木が倒れ前に進めない、ゲリラの襲撃といった困難を次々ぶつけてくるという脚本のサドっぷりで飽きさせない。

自分語りを始めるという見事なまでにフラグを立てるが、自分語りが終わるやいなや、いきなりパンクして墜落トラック爆発という、怒涛のフラグ回収っぷりには笑ってしまった。タンジェリン・ドリームの、ある時代特有のシンセBGMは正直浮いてんのか馴染んでんのかよく分からないが、耳に残る。
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