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スーパーティーチャー 熱血格闘のdm10foreverのレビュー・感想・評価

3.8
【直球勝負】

久しぶりに、深いことを考えずに「まんま」の映画を観た気がする。
勿論いい意味で。

お正月にちょうど「ごくせん」のイッキ見SPやってたけど、あんなテイストだよね。
安定感抜群な「予定調和」。
でも、この作品を日本の学園モノで例えるなら、かなりオーソドックスというか実は古典的な部類に入るんじゃないだろうか?
言うなれば「金八先生」よりもっと前の。

やっぱり昔ってまだまだ先生の存在って大きくて、どんなに生徒が反抗的な態度をとったとしても最後には「先生~~!!」っていうハッピーエンドっていうのがスタンダードだった。
それがいつしか、「反抗」という形で自己主張する不良たちと、「腐ったミカンは他のミカンを腐らせる」という理論で追い払いたい学校という対立構図が出来上がり、その中で「金八先生」のように不良も善良も分け隔てなく接する先生によってなんとか保たれているというギリギリの時代を迎える。
やがて、生徒たちは「学校」に対して反抗すらしなくなる。
義務もルールも知らないくせに「権利」だけを声高らかに主張し、もはや大人の介入すらも拒むようになった。

どの時代にもそれぞれの言い分があって、一言で「良い」「悪い」と決めてしまうのは簡単だけど、いつだって大人が未成年の尖った自我とぶつかり合うことを躊躇ったら、そこで道は途切れてしまう。

幸い僕は小、中、高、大とグレることもなく、ふんわりと大人になれた(さすがに大学でグレても誰にも相手にされないけど・・・)。
ずっとサッカーやってたから、グレる暇がなかったってのが一番の理由かもしれない。
ただ、友達にはサッカー辞めてそっち側に行っちゃった奴もいたけど、グレてる奴らって「何もしない」ようにみえて、結構大変なのよ。
授業中だってね、45分(50分?)もの間ボ~~っとしてるのって、実は結構疲れんのよ。
だって彼らは普段部活とかで体力使うようなことをしないから、そもそも疲れてないしね。
ビーバップみたいに屋上でタバコ吸おうにも上級生の許可がないと屋上に上がれないとか、なんだかんだで結構上下関係に縛られてたし。

普段集まって何やってんの?って聞けば、夜中に集まって徹マン(徹夜でマージャンすること)かな・・だって。お前麻雀出来ないよね?って突っ込んじゃったよ。

不良って意外とつまんないな・・・と彼を見て思った。
結局「無理」して不良やってなきゃいけないんだ・・・みたいに見えちゃって。

そんなこんなの遠い思い出話。

自分が学生だった頃、別に問題児だったわけでもないし不良だったわけでもないけど、今になって思うと、もしこんな先生がいるんだったら、思い切って「不良」をやってみたかったな・・・て(笑)。
どこまでを「不良」っていうのかはよくわからんけど、こんなに正面切って受け止めてくれる先生がいるんだったら、思いっきりぶつかってみたかったなと。
きっとあの時の僕は「40人ちょっとのクラスの中の一人」。
別に目立ちたかったわけでもないし、先生の気を惹きたいわけでもない。
でも、今になって思えば僕の青春は「教科書通りの青春」なのだ。
当たるか外れるかわからないドキドキ感はそこにはなく、ただ「応募者全員プレゼント」という準備されたゴールに向かってすごろくのボードの上を進んだだけだったような気がする。

年取るとね、「青春時代を美化する傾向にある」って若い人は言うでしょ。
そうなのよ、間違ってない(笑)
恥かしい思い出や嫌な思い出は、心の中の「普段使わないフォルダ」の中にしまってしまうから。

でもね、どんなに美化しようにもしきれないくらいに、沢山の後悔もしてるんだよ。
「あの時、もっとこうすればよかった」
「あの時、アイツが言ってくれたことって・・・」
「恥かしがらずに聞いときゃよかった・・」等々。

そんな時に、自分の事を本気で見てくれる大人が近くにいるって、実はとても有り難い事だと思う。
何故なら、大人は沢山の後悔をしながら、それでも前を向いて生きてきたから。
だから、自分の後ろに続く若者たちが道に迷わないように、自分のような後悔をしないように教えてくれているんだよ。

先生=大人っていう図式は成立しない。
若いときに「勉強しか教えない教師」じゃなく「本物の大人」に出会うことが出来た人は幸せだと思う。

この作品は、ドニー・イエンが出ているって言う時点で「それなり」の構えをしてみていたんだけど、いい意味でマイルド。
もちろん「ドニータイム」もあるけど、死闘というようなレベルではなく、過去作なんかに比べれば「お尻ぺんぺん」レベル。

そんな型破りなドニーが先生をやるという設定に対して、「後悔」や「人の為になること」というストレートな理由は結構しっくりきた。

子供たちも性根が腐っている子は一人もおらず、ただ「自分を照らしてくれる光」を探していただけ。
悪役にも理由があり、みんながドロドロの泥沼展開にならずにいけたのは香港製作のなせる業か。
(これ、韓国で作ったら力技で「韓国ノワール色」が出てしまったかもね)。

そんな感じで、終始優しい感じで見れたのも良かった。
とにかく、ドニー・イエンの目が優しい。
それだけでもこの作品好きだな。
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