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マイ・ブックショップのtheocatsのレビュー・感想・評価

マイ・ブックショップ(2017年製作の映画)
4.2
英国貴族”慈善家”の陰険・陰湿・残酷なやり口を徐々に刻印づけていく

パッケージの雰囲気的には中年おばさんが本屋をオープンさせるまでの奮闘と、軌道に乗ってからの安穏を描いたほのぼの系なんだろうなと。

ところが、序盤から早くもきな臭い”種”が混入されていて、話が進展するほどに徐々に”発酵”し、終盤においてほのぼの系なんてとんでもない“毒”がいやが上にも明確なものとして視聴者に刻み込まれることになる。

この女性監督作品「死ぬまでにしたい10のこと」では苦虫噛み潰し気分にさせられたものだが、本作品における「毒の昇華のさせ方」は見事だったと思う。

ヒロインの敵役だった<上品な残酷クソ婆あ>は見事に自らの欲望をこともなげにかなえたわけだが、死ぬ間際や死後の世界でもだえ苦しむことになるのかもしれない。なんて思ったりもした。←いや、死んでからも上品ぶったお澄まし気分で良心の呵責などこれっぽちも生じないかもしれない。苦笑

映像特典のインタビューや撮影風景も興味深いものがあったが、英国的港町の風景も実はバルセロナロケがあったみたい。
そう言われればスペイン的色使いが多少あったような気もするし、それがダークトーンになりがちな英国映画に異色の華を添えていたと言えるかも。

映画に話を戻し、ヒロインにとっては屈辱エレジーながら、シナリオ的には決してバッドエンドではない救いがあったのも特筆すべきかと。
ともあれいい作品でした。

012207
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