ちろる

Girl/ガールのちろるのレビュー・感想・評価

Girl/ガール(2018年製作の映画)
3.7
私は女の子。私は女の子。
夜目を閉じて、朝が来たら何もかも思い通りになっていればどんなにステキか。
でも、やっぱり今日も昨日と同じ。

実在するベルギー出身のトランス女性ダンサー、ノラ・モンスクールの実体験に基づいた作品でトランスジェンダーの主人公が葛藤しながら、バレリーナを目指すララの姿を繊細に描いている。

思春期に差し掛かると誰もが感じる二次性徴。
性不一致がない私でさえも、その変化に動揺し、嫌悪を覚えてしまっていたと思うのだが、ララにとってのその嫌悪感は私のそれとはきっと違う。
女友達とは違って一向に膨らまない胸、ぐいぐいと伸びて行く身長や成長していく喉仏に毎朝息が詰まりそうになる。

レオタードで目立たぬように、股間をテーピングをして、トウシューズの入らない足も血だらけになりながらテープで押さえつけてなんとか体勢を保とうと頑張るが、心も体も毎日痛みが伴う。

成長期ゆえに、ホルモン治療も手術も希望通りに進めてもらえず、友人たちとの隔たりに苛立ちが隠せない。
もちろんララの苦しみがわかってあげられる訳ではないけど、焦っても動く事を許されず、彼女は自分を痛めつけるしか術がないのは見ていてやるせ無い。
たとえそれが刹那的でも、女の子でいられる今を堪能したいと思うその気持ちは誰がとめられようか。

身近に同じ境遇の人がいないとしても、トランスジェンダーをテーマにした作品で多くある差別や、中傷などは一切なく、ララの父親をはじめ、医者も親戚もララの夢を応援していて、理解がある大人たちがたくさん居ることは救いだった。

ドキュメンタリーのようなカメラワークで見せているお陰で、ぐいぐいとララの精神世界に誘われていけるのは、主演の自身のヴィクトール・ポルスターの透明感のある魅力があってこそ。
男性のダンサーだとは知らなければ絶対わからない彼が身も心もララに憑依した事で、このような素晴らしい作品に仕上がったのだと思います。
ちろる

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