ドゥン

グリーンブックのドゥンのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
5.0

グリーン・ブックがアカデミー賞を獲得したとき、同じ人種差別を扱ったスパイク・リー監督のブラック・クランズマンも候補に入っていた。グリーン・ブックが作品賞を獲得したとき、スパイク・リーは怒って会場を出ていったそうだ。
私はその後、映画館でどっちも観た。
作品賞は絶対グリーン・ブックだと思った。

そう思う理由は、この映画からしか得られない「温かさ」があるからだ。映画の持つ温度というか、なんというか。それをみんな感じたのではないだろうか。

マハーシャラ・アリのDr.シャーリーの演技が本当に素晴らしい。高慢ちきな彼が庶民の暮らしを理解し、トニーと親交を深めていく。
でも、心は常に不安で、何者にもなれない自分と向き合い続けている。その寂しさ、すぐに裏切られるんじゃないかという不安、それがない混ぜになる表情。すごい。

トニーを演じたヴィゴ・モーテンセンも家族のために働く一家の主であり、ちょっと意地汚なく、雑多な部分こそあるが、愛に溢れ、義理堅い人間としていい味が出ている。

ブラック・クランズマンはどうしても最後に怒りや爽快さはあるが、「温かさ」がない。
作品への熱は感じるが、温かくはない。これに尽きるのだと思う。

決して説教臭くなく、でもメッセージをたくさん散りばめて、役者が実在の彼らへリスペクトを込めて、この映画が出来上がっている。
それがひしひしと伝わる。
「温かい」という熱がこの作品にはある。
そういったところがやはり大衆にはウケるし、人々のパーソナルに落とし込まれるものがエンターテインメントのあるべき姿です。
最高の映画です
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