すずき

グリーンブックのすずきのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.3
上流階級&一般庶民のコンビ、というと「最強のふたり」や「最高の人生の見つけ方」を彷彿とさせる。
その組み合わせって、コメディとしてもドラマとしてもハズレ無しの王道、悪くいうとド定番のよくある話。
この映画も想像通り、金持ちと庶民が旅をして、それぞれの価値観とカルチャーギャップに驚き、楽しむうちに友情が生まれ、後半ケンカしたりするけど仲直りしてかけがえのない友となる、みたいな定番ストーリー展開。
庶民が金持ちに、「コレ食ってみろ」「何だねコレは、不衛生な!」「いいから、美味いって」「…美味い」みたいな定番掛け合いもあるぞ。

もちろんそれだけでも佳作以上の楽しい映画だけど、この作品が他と違うのはキャラクター。
一般庶民のほうが白人、上流階級の方が黒人という「最強のふたり」とは逆転した人種となっている。
しかも舞台は60年代、人種差別が今より遥かに非道い時代に、金持ちの黒人とその運転手の白人、という凸凹コンビがどう旅するか、がこの作品ならでは。

白人の一般庶民、トニー・バレロンガは頭は弱いが腕っぷしは強い、特技は大食いという、…まあなんというか「バカ」である。
黒人が口をつけた家のコップは処分する、ぐらいの当時としては「普通」の差別感は持っている。
演じるヴィゴ・モーテンセンのだらしない中年体型が衝撃的!

黒人の上流階級、ドクター・シャーリーは、ホワイトハウスでも演奏した事のある名ピアニスト。トニーもその演奏を聞いて感心するほど。
品性高潔な彼だが、黒人の上流階級という、当時としては珍しい立場の所為で、白人の輪にも黒人の輪にも入れず、自らを孤独に追い込みがち。
そんな彼が、どうして人種差別ガチ勢の多い南部地域にツアーへ行くのか、その理由はクライマックスに判明する。

途中トニーがお土産屋の石をパチる、割とゲスい「それはあかんやろ…」なシーンあるけど、しっかりドクターに怒られた後、音楽が明るい曲調で締める。
見せ方によってはトニーに嫌悪感しか湧かないようなシーンでも、なんかバカな悪ガキをみてるような、ほっこりする印象に変えるのは上手いと思った。

こんな2人の掛け合いも好きだし、脚本も丁寧で非常に良く纏まってる映画。
アカデミー賞取ってるしポリコレメッセージ色が強いだけの映画なんやろ(偏見)とか思ってたけど、ポリコレ関係なく楽しい映画でした。
クリスマスパーティーがラストシーンだから、クリスマス映画としてもいいかも。
あと実話ベースってのもエンディングで初めて知ったよ。やっぱり「最強のふたり」とちょっと似てる。