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グリーンブックのmatchypotterのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

いわゆる黒人差別がテーマの映画で日本人でもこんなに笑える映画はあんまり無いのではないだろうか。事あるごとに笑えた。そして、心が暖かくなる。

学のない腕っ節自慢の口先でたらめヤローのイタリア系白人トニーと、才能があるが故に気位の高い天才ピアニストの黒人ドク。
お互いが白人黒人のそれぞれの世界ではどこかはみ出してしまっている。白人だが純粋な白人でもなく、黒人だが差別されてる黒人でもない。
しかし、大方の世間では差別する側の白人とされる側の黒人。それが黒人の方が後部座席で偉そうに座り、白人がそのドライバーを務める。
この不整合な行き違ってる設定が、いや、むしろ観てるこっちが不整合だと決めつけてしまってるがために、この物語が、いや、当の2人がそれがそんなこともないだろ、と、案外一般的な偏見に捉われて見えてないのは自分達で、今ここにいる俺らがやれることやろうとしてんだからそうなるだろ、というやりとりになり、お互い不条理を抱えながら向き合い、ぶつかって、何かちょっとわかり合う。それがとても暖かく、笑える。

お互いどこか小馬鹿にしてたり文化的に許せないとこから始まり、小馬鹿にするどころかお互いを敬えるとこが見つかったり、頼り始める時もある。お互いの言い分が理解できないとこから、いつの間にか相手の意見を尊重し周りを説得し始める。
その過程がフライドチキンのくだらないエピソードだったり、手紙を校正し始める時とか、ちょっとしたことが2人の距離を縮めたりする。

その結果、黒人差別文化が当たり前の南部からすれば主従関係がまさに逆転してるように見える彼ら2人が行くことで巻き起こる彼らの(珍)道中。
きっと、まったくもって(珍)道中どころか本当は命の危険さえあっただろう長旅をユーモアを無くすことなく、見た目や生い立ちの違いだけで線を引かず、無碍にせず、まさに目で見て耳で聴いて口で話して笑い合って心で感じた結果に正直に思ったことを言い合ったからこそ生まれる友情がここにある。
いつしか、お互いの心情を理解し、尊重し合ってる関係はとても印象的。車内のフライドチキンの骨捨てる件はめちゃ笑ったけど。その前の拾った石の件がすげー効いてて面白い。

白だ黒だというアメリカ文化の話ではあるけど、今や日本にだって色んな人がいて、色んな生活を送っているわけで、これを観ると益々自分が偏見や誰かが決めた常識という色眼鏡で観ているがために大事なことを見逃してるんじゃないか、と思う素晴らしい映画。

みんなが自然がきれいだって言ってたけどそれ見たら本当にキレイだなとか、無骨でバカっぽいけど、あの手紙の件とか、すごく心が温まるというか、別に変わろうとか変わりたいと思ってやってるわけでもなく、極々自然に相手の声に耳を傾けていつの間にか次を欲しがったり、嫌々仕事をこなしてるつもりがいつの間にかその仕事にプライドを持ち始めたり、ちょっとした出来事が気付けばこんなに大事なことなんだな、とか、笑いながらグッと来る。素晴らしい。

そして、ヴィゴモーテンセン、俺のアラゴルン、、、すげーな、よく仕上げたなこれ。どっちがホントの彼に近いのかは気になる。
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