ゴロー

ドンバスのゴローのレビュー・感想・評価

ドンバス(2018年製作の映画)
4.0
<現実と虚構>
フィクションとドキュメンタリーの区別は無意味であるという意見を最近よく目にするが、本作はその典型的な例ではないだろうか。劇映画という体裁をとっているが、実際見せられているのは「現実」が溶解したドキュメンタリーである。現在進行形で起きている戦争がその感覚を一層加速させる。

しかし、現実と虚構の揺らぎは映画的な意味だけにとどまらない。本作で描かれているドンバスで繰り広げられる行為の虚構性も同時に浮き彫りになっているからである。ニュースをでっち上げ、フェイクニュースを流すのはその典型である。新たな「国家」として独立し、統治のために虚構が積み上げられていく。

この二重の意味で現実と虚構の揺らぎに晒されるという稀有な映画体験であったが、それは極めて現代的な主題なのかもしれない。
ゴロー

ゴロー