Inagaquilala

華氏 119のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

華氏 119(2018年製作の映画)
3.7
冒頭の、誰もがヒラリー・クリントンの大統領当選を予想していて、いざ蓋を開けてみるとトランプ候補の優勢が伝えられていくシーン。いつものマイケル・ムーア独特のおちょくりでコラージュしているのだが、なかなか興味深い。ムーア自身が、トランプ大統領誕生の予想を事前に披露していただけに、狙っていたシーンとも受け取れる。タイトルの「119」とは、トランプ候補が大統領選挙に勝って勝利宣言をした日の日付。この日を一里塚として、アメリカ社会にどんな変化が起きているのかをレポートしたドキュメンタリー。

残念ながら、ムーア監督お得意のアポなし直撃取材は、わずかにイリノイ州知事の自宅に押しかけて、水を撒くぐらいしか見られないが、それとて、門に向かってするだけなので、人物への直接のインタビューではない。今回の作品は、むしろそのような取材方法ではなく、ひとつひとつ事実を積み上げていく「調査報道」のかたちを、途中まではとっている。故郷の水道水疑惑を追及するムーア監督の意気込みは凄い。ただ、後半になると、それをなんとかトランプ政権の問題に結び付けようと、かなり力技も発揮する。いつも話題を振りまく、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリーだが、今回も明らかに中間選挙をターゲットにしていた。2年後の大統領選に向かって、彼がどんな作品を準備していくのか、とりあえず目が離せない。
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