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ジョーカーのLaSalsaのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.2
これは…心が晴れる映画ではない。悲しい。ジョーカーは絶対にウェインのようにはなれない。ということ。それはジョーカーだけではない。

ジョーカーは脳に障害があったけど、思考は至ってまともだ。カウンセリングで話を聞かれていないことを知っていたし、マレーにはテレビで小バカにされている状況を理解し、腹も立っていた。ゲイリーには優しくされていたことに気付いていたし感謝もしていた。殺人を目にして怯えている彼を「怯えている」と理解し、かつ普通に帰した。狂人ではなく、普通の人だよ。

ジョーカーに苦痛を与えた人間を殺した時は快楽を感じた可能性もなくはないが、どちらかと言えば張り詰めた緊張が解けた、というだけで…幸せや快楽を感じている表情にはとても見えなかった。

彼は生まれながらに脳疾患を抱ており、幼少期は虐待を受け、貧しく、街の悪ガキ集団に襲われ職を失いかけ、同僚に悪意を持って裏切られ職を本当に失い…悪夢のような現実で散々だ。殺していい理由にはならんけど。

ジョーカーの境遇は少し極端かもしれないが、最初から持たない者は持たないままという可能性が高く、これだけ貧富が明確になるとその壁を超えることはできない。例外のサクセスストーリーはあるかもしれないが、数少ない成功であり、数少ないからこそサクセスストーリーが輝いて聞こえるのだろう。

我々の人生はどうだろうか。限りなく低い大成功がなければ予想される範囲の上下限に収まることになるよ、と…。幸せの形って分からない。辛い境遇がどんなに続いても、目指す幸せを描くことが出来なければ、永遠に雲の中でもがくような人生は変わらない。富の差が規定する世の中はなんと罪深いものか。

と、モヤモヤ考えてしまった。完成度の高い良作だ。あまり好きな内容ではないが、良作であることは間違いない
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