旅するランナー

デスティニー・イン・ザ・ウォーの旅するランナーのレビュー・感想・評価

4.0
【Not Hard To Say I'm Sorry】

ドーリットル作戦(第二次世界大戦におけるアメリカ空軍による日本本土に対する初めての空襲)後、アメリカ兵士をかくまう中国人母娘。
山村の一軒家で次第に打ち解け合う姿が、とても静かに描かれます。

主人公の若い未亡人が、清楚、たおやか、清々しい。
絹糸をカタカタとつむぐ姿、サラサラゆく小川で洗濯する姿、愛する娘を学校へ送り迎えする姿...
東洋の神秘的美しさです。

そんな静かな生活に、時々チャチャを入れる日本軍兵士。
まぎれもない悪役です。
しかし、デンマーク人ビレ・アウグストが監督しているだけに、客観性・中立性は比較的保たれているように感じます。

<神戸映画サークル 市民映画劇場8月例会/永田喜嗣氏(抗日映画研究家)講演>
・ドーリットル作戦を描いた1944年映画「東京上空三十秒」へのオマージュが見られる。空襲シーンのカメラアングルが同じになっている。
・作戦参加者のひとりデシューザー軍曹は、捕虜の時に聖書を与えられ、戦後キリスト教伝道師になる。彼が著した小冊子を、淵田中佐(真珠湾攻撃の攻撃隊長)が手にして、この人もキリスト教牧師になり、アメリカで伝道活動を行う。
・当作品を観る意義は、他国民の立場で想像力を働かせること。中国人の苦しみを分からせて頂き、政府に任せきりにせず、一市民として和解していくこと。

この作品も、悲しい結末が待っています。
すべての戦争の犠牲者は、一般の人たちなのです。
確かに、本作のように、感情を抑えて静かに現実を見せて頂くと、謝罪する気持ちが静かに自然とフツフツ湧いてきます。
素直になれないことはないです。