Inagaquilala

ポーラー 狙われた暗殺者のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ポーラー 狙われた暗殺者(2019年製作の映画)
3.9
原作がグラフィック・ノベル(「Polar」)、つまりコミックであったり、監督がミュージシャン出身で、マドンナやビヨンセ、レディー・ガガなどのアーティストのミュージック・ビデオを手がけたヨナス・アカーランドということもあったりで、作品はポップな映像とテンポの良い場面展開で描かれている。自分としては、冒頭に登場するチリのプール付きの豪邸の場面から、そのスタイリッシュでもある映像に引き込まれた。

マッツ・ミケルセンが演じる主人公は、リタイアを控えた凄腕の暗殺者。彼は暗殺を請け負う組織に属していたが、50歳を機に引退を考えている。この闇の組織は、引退する者には高額な退職金が払われることになっているが、それを避けるために、悪辣なボスは、主人公を亡き者にしようとしている。このあたりは、如何にもグラフィック・ノベル的展開なのだが、アカーランドの創り出す映像で見せられると少しも気にならない。むしろ、妙なリアリテイさえ感じてしまうのは、この作品の軽やかなノリのせいだろう。

物語の舞台はチリからアメリカ、ベラルーシ、そしてまたアメリカ国内の各所に飛ぶのだが、このめまぐるしい場面転換も、鮮やかな色彩感覚に惑わされてなのか、実に快い。ネットフリックスの配信作品なのだが、劇場の大スクリーンで観てもよいかなとも思う。アメリカでのこの作品に対する批評には、かなり辛辣なものもあるが、自分としてはじゅうぶんに楽しむことができた。主役のマッツ・ミケルセンの演技も悪くない。好きなクライムアクションの1つであるブラジル映画の「ツゥー・ラビッツ」(アフォンソ・ポイアルチ監督、2011年)に似た味わいのある作品で、この「ポーラー 狙われた暗殺者」のスウェーデン出身のヨナス・アカーランド監督の作品にも期待したい。
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