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シャドーの一人旅のレビュー・感想・評価

シャドー(1982年製作の映画)
3.0
ダリオ・アルジェント監督作。

アメリカの人気ミステリー作家・ニールが滞在先のローマで連続殺人事件に巻き込まれていく姿を描いたスリラー。

アルジェント作品だが、ビビッドな原色をふんだんに使った独自の世界観は皆無。物語も連続殺人事件を取り扱ったもので、特に意外性は感じない。
ただ、鑑賞者が“犯人探し”をたっぷり楽しめるように良く工夫されている。たとえば、わざわざ怪しげな人物(浮浪者など)を意味深に登場させることで、「コイツが犯人なんじゃないか?」と鑑賞者の想像を掻き立てるし、登場人物にそれらしい振る舞いをさせて犯人臭を漂わせてくる。
騙されるつもりなんかなかったのに、フェイクの連発にすっかり騙されてしまった。フェイクのフェイクみたいなものまで用意されていて、しかも登場人物がやたら多いから犯人を言い当てることが意外と難しい。

ただ、連続殺人事件が題材なので次から次へと主要な登場人物が殺されていく。そのため、物語の後半になるとある程度犯人を絞り込めるが、それでも予想は当たらなかった。そうした意味では、グロテスクな描写や独特の色彩感覚に注目が集まりがちなアルジェントの作品群の中では、『歓びの毒牙』や『4匹の蝿』のように、スリラーとしてだけでなくミステリーとしても充分に楽しめる内容になっている。

もちろん、アルジェントらしい残酷描写もしっかり健在。斧で頭や腕が切断されたり、剃刀で喉が切り裂かれるシーンは目を背けたくなるほど凄惨を極める。凶暴な犬を使ったちょっと変わり種の殺しパターンもあってなかなか飽きさせない。出血量も尋常ではなくて、壁一面に血が飛び散る映像のインパクトは絶大。女の絶叫も効果的に使われている(ボリューム注意!)。
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