きよぼん

麻雀放浪記2020のきよぼんのレビュー・感想・評価

麻雀放浪記2020(2019年製作の映画)
3.8
公開中止でよかったんじゃないかな(笑)


映画というのは、作品それだけで評価するものだという意見がある一方で、どうしてもそのときどきの「映画の外の世界」で何が起こっているかで評価がわかれてしまうものでもあります。

出演者のピエール瀧が逮捕されるという、タイムリーすぎる話題を提供してしまったこの映画。結果としては、この映画になんだか深みというか、タブーに挑戦してるような変な迫力を与えたプラスの効果があったのでは?という印象を、自分を受けました。

具体的にいうなら、坊や哲(齋藤工)が追い込まれて記者会見するところなど。あれなんかは、逮捕後に公開することを世間に明言した東映の会見とシンクロしてる感じがあって、思うところがありました。

逮捕後にどのような編集がされたかわからりませんが、公開バージョンだけをみると、ピエール瀧の出演シーンは全カットでも問題ないレベル。

ということは、あの東映の会見さえも、したたかな話題づくりだったんじゃないの?といううがった見方もしてしまいます。

もちろん、出番は少なくてもカットしないという判断は映画界全体からすれば大きなものでした。だけどそう言いたくなってしまうのは、事件の前から「オリンピック中止をテーマにしたから政治家から公開中止の圧力がかかっている」だの、「映画祭で公開を断られた」とか、しょーもない話題作りが下らなさすぎた。映画にとって軽率に扱っていいはずがない「公開中止」を匂わすくらいだから、そういう目でみられても仕方ないというのはいいすぎか。まあ、それは終わったことだから流すべきなのでしょう。粘着ごめんね。

とにかく「映画の外」でいろいろありすぎて、せっかく「映画の中」がおもしろいのに残念という思いがあります。

妙な未来世界の架空の2020東京。1945年からやってきた坊や哲とのギャップ。東京オリンピックが中止になったため、日本のAIの技術力を世界にアピールする必要があり、それには人間に麻雀で勝つことであるという、深みがあるんだか思いつきだかよくわからない設定など、いちつくせになる魅力。

その容姿を最大限利用したアンドロイドのベッキーというヴィジュアル。齋藤工の大人の色気。さらには小松政夫、的場浩司、もも。竹中直人といった役者陣の座組も面白い。

邦画のメインストリームとなっている面白さじゃない。でも面白さっていうのは一方向ではなく、こういうベクトルの面白さだってあるんだよ、というところをみせてくれます。意味なくおっぱいポロリで笑ってもええんですよ!そういう面白さだってあるんです!

「管理社会を描いた」うんぬん「現代日本に欠けているものを」かんぬんなどという難しい見方もいいと思いますが、自分的にはこの映画はガハハと笑いたい映画。

問題作だといわれたり、妙な宣伝されたり、これには深い意味があるなどと、いろいろ意味づけしないと。こういう映画は公開されることを許されないのか。映画はいろいろあっていい。この映画のコピーみたいですが、「めんどくせーぞニッポン」という気持ちです。
きよぼん

きよぼん