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足跡はかき消してのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

足跡はかき消して(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

森の中で自給自足の生活をしている親子の話。

デブラ・グラニック監督がじっくり作り込んだだけあって、一つ一つのディティールが豊かで味わい深い作品でした。
自給自足の生活描写は勿論、退役軍人に処方される薬を売ったり、クリスマスツリー(もみの木?)を伐採したり、ウサギの品評会があったり…。
決して派手な作品ではないのですが、興味深いシーンが連続するので、グイグイ引き込まれていきましたね。

物語的には、社会生活に適応出来ない父親と好奇心旺盛な娘の逃避行が描かれます。
家も仕事も用意してもらったにも関わらず、そこから逃げ出す父親の行動は理解出来るものではありません。
でも、彼にとって、あの生活は自殺したくなるくらい辛いものだったのだろうし、それだけ彼の心の闇は深かった…という事なのでしょう。
薬や家や仕事を与えるだけでは、救えない魂もあるのです。

しかし、娘を連れてのサバイバル生活は、ある種の虐待にも見えるし、そもそも学校に通わせていない事も問題があるわけで…。
結局は娘が社会生活を望んだ事もあって、2人は別れる事に。
少し特殊な親子関係を描いた作品ではありますが、こうした親離れ・子離れは誰もが通過するわけで、普遍的な親子の成長物語の様にも感じられました。

父親に反感を抱く人もいるかもしれませんが、「彼が何故自殺をしないのか?」「孤独になっても生き続けるのは何故か?」という部分が大切だと思うし、それは別れても森に食料を届け続ける娘の想いと呼応するんじゃないかなと思います。
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