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足跡はかき消してのJTのレビュー・感想・評価

足跡はかき消して(2018年製作の映画)
4.0
現代社会に居場所を求めて

2019 . 61 -『Leave No Trace』

人目を避けて公園の森林の中で暮らすPTSDを患う父とその娘の成長と親離れ子離れを描いた静かな良作

娘役のトーマサイン・マッケンジーちゃんの静謐でいて力強い演技と愛しい表情に胸を締め付けられる
父親役のベン・フォスターは荒々しい役柄が多い印象ですが今作では親の優しさと男の弱さを兼ね備えた穏やかな父親を演じきっていました

アメリカの社会問題と親と子の在り方
自由の国アメリカが生む不自由の皮肉
基本的に自由には制限があってそのラインを超えてしまうと違反行為になり法に触れる
広大な森林を公共施設にして自然を奪う人間
戦争から帰還した者の居場所を奪う社会
そんな不条理な世の中で居場所を求める父娘
どう頑張っても社会復帰できない父と
父を支えながらも人との交流を求める娘
お互いの間には深い絆と愛があった
しかしふたりは居場所を見失っている
父にとって娘だけが唯一の居場所で
娘にとって父は一時的な居場所だった
いずれ子は親を離れて親は子を離す
この流れは成長の過程でごく自然なことだが
もし親が子を離せなかったらどうだろう
客観的に見たら哀れな父親なのかもしれない
ただそれを最も痛感しているのは父親自身
一緒にいることが愛なのか手放すことが愛なのか
心に傷を負った父と繊細な娘の複雑な愛が辿り着く静かな結末をきっとずっと忘れない

劇場公開されていないのがもったいない作品です
JT

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