このレビューはネタバレを含みます
舞台となった『松の湯』が家からめっちゃ近くて、当然街並みも見たことあるっつーか、なんなら犬の散歩で通ったりするので親近感湧きまくりだった。
で、その親近感補正が入ってないとは言い切れないが、妙な面白さがあった。
舞台は銭湯。
そこでは夜な夜な殺人が行われている。
銭湯のオーナーはヤクザに借金があり、ヤクザから仕事を請負い、銭湯を「殺す場所」として貸すことで借金返済をしている。
オーナーが殺人に加わることはないが、1人だけいる従業員が、閉店後にターゲットの誘拐→殺人→死体処理を担当している。
その銭湯で働くことになった、東大卒でアルバイトを転々としている無気力な男、鍋岡和彦。
銭湯の常連客で、和彦の高校時代の同級生、副島百合。
和彦と同じ日に銭湯の面接を受けにきた、金髪のチャラい男、松本晃。
正直、全然知らない役者さんばっかりだから、登場人物を把握するのも苦労する。
例えば、堺雅人が出てたら「あぁ、この人は主役か重要人物だな」って思うだろうけど、なんせ知ってる人が出てこないもんだから、最初に「この人が主役かな?」って思ってた人が、登場からたった4分後に殺されてしまう。
殺し屋にナイフで首を切られてしまうのだけど、そのナイフの構え方がなんか笑えるので、グロさは全然ないと思う。
その後もバンバン死ぬけど、殺される人が重要なわけではないので、そこに注目がいかないように、あえて血のりとかはリアルさを削いでいるように感じる。
また、クラウドファンディングもしていて、予算300万円で作った映画だそうなので、どうしたって映像やセットにお金がかかっていない感じは伝わってくる。
セリフを甘噛みしたようなシーンがそのまま使われていたり、撮り直しする余裕なかったのかなぁと思ってしまったりもする。
だから完成度で言えば100点ではないんだけど、費用対効果で言えば、300万円以上の物を作り出しているのは間違いない。
監督も役者も、いわゆる有名どころではないけど、才能があれば面白いものは作れるっていうことを証明している。
有名じゃないと仕事も少ないだろうし、食べていくのはめちゃくちゃ厳しい業界だと思う。
それこそ『メランコリック』な状態になってしまうんだろうけど、クラウドファンディングを活用し、「仕事が来ないなら作っちゃえ」と言わんばかりに自主制作に挑んだスタッフだからこそ撮れた妙な面白さが、本作にはある。
ラストシーンに込められたメッセージ、あれが分かる人生で良かった。