ルーク大佐

ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実のルーク大佐のレビュー・感想・評価

4.0
戦争と戦闘がどんな記憶を兵士に植え付けるのか。善き思い出もあれば悪夢が何十年も続く思い出もある。一人の若き下士官の命がけの献身。国や戦友に対する自己犠牲はどのような意味を持つのか。

原題『The Last Full Measure』はエイブラハム・リンカーンの有名なゲティスバーグ演説(they gave the last full measure of devotion<彼らは最後まで全力を尽くした>)から引用したものだろう。

“人民の人民による人民のための政治”のフレーズで有名な演説である。まともなアメリカ人ならばだれもが知っている。
最後まで映画を見ると、時代を超えて演説の深みがわかってくる。

事実ベースの脚本なのでストーリーの重みが違った。
若き兵士の行為は名誉勲章に値するものなのか。
その調査を渋々引き受ける男が主人公だ。それまで国防総省の官僚として出世だけを目指し、効率的に仕事も選んできた。能力が高く上昇志向の塊のような男だ。

ベトナム帰還兵への聞き取り調査を嫌々ながら進めるなか、ベトナム戦争当時、今の自分と同年代の若者が戦地に赴き、命がけの献身を国家に捧げてきたのに報われていないことを知る。

彼の中で何かが変わった。自らの現在の職務、いわゆる“名誉勲章リサーチャー”という、彼が小馬鹿にしていた職務への献身度合いが高まったのだ。エリート官僚としての最大のリスクを伴いながらも、命がけの献身をすることを恐れなくなった。

ベテラン(=退役軍人)役者陣の演技がすばらしい。
印象的なのはかつての激戦地ベトナムのジャングルで暮らす男を演じたジョン・サヴェージ。過去の記憶を宗教心で乗り越え、どこか達観しているような演技に味わいがあった。
結果的に、ベトナムの戦地を訪れたことが主人公の意思を決定づけた。あの泣き演技はズシリと心に響く。

ジョン・サヴェージまだ現役で役者をしていたことにびっくり。
久々に映画で見かけた。

本作はラストのスピーチが絶妙だった。アメリカならではの軍人賛歌。
もっと評価されてもいい、感動的なストーリーだ。
ルーク大佐

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