昨年インド在住の友人が絶賛していて観る気満々だったんだけどチュプキでかかった時に入院という憂き目に遭い未見のままだったのだが、つい最近U-NEXTで配信されていることを知りようやく観ることができた。
インド映画にしては口説くなく単純明快なストーリー展開だった。今まで観たインド映画の中では手作りな感じ。制作は2018年で日本公開は2018年に『世界はリズムで満ちている』というタイトルで公開された後に2022年に『響け!情熱のムリダンガム』というタイトルで上映された。何でも映画業界未経験の個人がクラウドファンディングを経て再公開に至ったらしい。正に情熱の塊!
この映画で扱われているカルナータカ音楽はインドの伝統音楽であるが宮廷音楽として栄え継承されている非常に慎ましい音楽である。そして映画の中でもインドの差別階級であるカースト制度や英国支配などが色濃く反映されている。
どことなく楽器職人と演奏者という関係をカーストに置換しているような気もしたが穿った見方だろうか…。
そんな映画なので劇中にも金言が溢れていた。中でもムリダンガム作りの職人である主人公の父親がムリダンガム作りに際し
「(ムリダンガムを作ることは)普通の仕事じゃない。生命だ。枯木や動物の皮を生命ある楽器に変える。この仕事には謙虚さと忍耐が必要だ。」
と発した言葉はムリダンガムに限らず全ての楽器に共通する楽器作り職人の哲学でもあると感じたし
「世界はリズム=ビート、世界はリズムにあふれてる」
という台詞には音楽の3代要素であるリズムに焦点を当てたこの映画にとって非常に重要な意味を持つ。何故ならこれはカルナータカ音楽が歌に重きを置いた音楽であり、それまで軽んじられていたムリダンガム奏者にスポットを当てたという意味でもあるから。その1拍子(1拍)に込められた奏者魂の響きは作り手の響きでもあるのだ。
音楽を担当したのは世界的巨匠であるA.R.ラフマーン。日本では『ムトゥ 踊るマハラジャ』や『スラムドッグ$ミリオネア』の音楽を担当したといえば分かりやすいか。
なにはともあれムリダンガムの奥深い演奏が堪能できるので次にインド在住の友人が帰国した際には、この映画を上映した後にムリダンガム演奏の講習を開いてもらいたいと痛烈に願うのであった。
《あらすじ》
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インド伝統音楽の打楽器「ムリダンガム」の魅力に心奪われた青年。身分の壁をはじめとするさまざまな障害や困難に直面しながらも、彼はムリダンガムの奏者を目指して奮闘する。
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とにかくムリダンガム愛とヴィジャイさん愛が炸裂した1本!