イチロヲ

伊豆の踊子のイチロヲのレビュー・感想・評価

伊豆の踊子(1963年製作の映画)
3.5
自分探しの旅を続ける書生(高橋英樹)が、巡業中の踊り子(吉永小百合)と相思相愛になるのだが、家柄の相違により多難な恋路を強いられてしまう。川端康成の小説を映像化している、青春恋愛映画。1974年度の山口百恵版は、同監督のセルフ・リメイク。

1963年当時の現代から大正時代へとフラッシュバックする形式が取られている。時代別のカップル像を対比させる手法は、原作には存在していないオリジナル要素。吉永小百合が一人二役を演じており、カップルを見守る「現代」の書生に川端康成の姿が重なる。

本編内では、吉永小百合のおぼこい少女像が、圧倒的なインパクトを生み出している。簪を鳴らしながら内股で駆け回るところだとか、大好きな書生と一緒にいるときの宙に浮いている感覚だとか、観ているこちらまで赤面してしまうほどの瑞々しさに溢れている。

キスもハグもしなければ、手を握ることもしない、極めて「純」な恋愛映画。踊り子に早いうちから目をつけていた伊達野郎に、最終的には処女を奪われてしまうのではないかという、後日譚を想像すると切なくなる。
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