うっちー

運び屋のうっちーのレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
3.5
町山智浩さんが、「おじいちゃんのコメディー」みたいな表現をしていて。でも、かなり前から映画館で観ていた予告では凄く緊迫感のある犯罪ものみたいで。一体どうなんだろうと確かめに行ったわけですが、本当に、おじいちゃんの苦いコメディー、と感じました。

イーストウッド演じるアールは、退役軍人でカリスマ園芸家だが、時代に乗り遅れて落ちぶれ、自宅や農園も手放すはめに。家族を顧みなかった為、そちらからもみはなされていたが、ひょんなことから麻薬組織に目をつけられ、金欲しさに意味考えずに老運び屋となるが、麻薬捜査班の捜査網は彼のすぐそばまで迫っていた、という話。事実というからびっくりするが、この話にイーストウッドは何を感じたのか。

ほぼ100%、イーストウッドの映画。出突っ張りだし、彼以外の登場人物の描きこみ方は薄めで、せっかくブラッドリー・クーパー(今回は短髪でこざっぱりしていて、うすいブルーの瞳が💗なんだけど)、ローレンス・フィッシュバーン、ダイアン・ウィーストら豪華俳優を揃えているのになんだかもったいない感が。悪くはないんだけど。
麻薬捜査班は、何度も一網打尽を期すも、なかなか決め手が打てないので、韓国警察か?とか思ってしまう(でも、捜査線におじいちゃんは上がってこないわな。距離感はわからないけど、急に羽振りが良くなったおじいちゃんがいる、という疑惑を、別のセンから絡ませられなかったのかなぁとか)。なかなか捕まらない、というのに時間をかけ過ぎな気がして、そこをもう少し省略しても良かったかな、とか。
脇役では途中からアールの車に伴走するようになるヒスパニック系の麻薬組織の片割れの男性が、一番良い演技をしていたように思った。名前わからないけど。アールの呑気さに呆れ、怒り、でも次第に情みたいなものが湧いていく様子が、真に迫っていたと思う。名前、わからないけど笑。

好き勝手に生き、家族はほったらかし。見捨てられて落ちぶれたら犯罪に手を染め、でも罪の意識はない、という、かなりのダメ人間なわけだけど、やはり魅力は否定できない。御大がやるからではあるけど、それだけでなくとも、ユーモアがあり、人を喜ばせたいという気持ちがあり、お節介だけど人を思いやることが好きで、勇気もあるし、最後は責任をとる潔さがある。この勇気と責任感を求めるのは今ではなかなか難しい気がして。だから、それを体現する御大は、それだけで素晴らしいわけだけど……。
感動よりも、正直、御大の鼻歌バリエーションの多さや女性好きの度合いに、思い切り笑わせてもらったのが、今作の私にとっての収穫。あとは、できる限りまた映画作ってほしいというだけ。どんな作品でも絶対足を運ぶから!

追伸 あのマフィアボス役がアンディ・ガルシアだったとは……! 全く気付きませんでした。
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