うっちー

貴公子のうっちーのレビュー・感想・評価

貴公子(2023年製作の映画)
3.7
キムソノの美しいポスターに惹かれて鑑賞。なんていうか、いろいろ微妙なような、でも観ている間は楽しかった。


賭けボクシングや裏仕事にも手を染めようとするフィリピンの貧しい青年、マルコがひたすら巻き込まれる話。そこに絡んでくるのがソノ扮する〝チング=友“。ビシッとしたスーツに身を包み、にこやかに笑いながら恐ろしい殺戮を繰り返す、その手の世界のプロ、らしい。なぜマルコにつきまとうのか、彼を殺したいのか、誰に依頼されたのかなどが全く見えない前半。また、マルコを韓国に呼び寄せているのは彼の腹違いの兄だという破格の金持ちのハン。ハンもかなり残虐な輩で、危篤状態の大金持ちの父の遺産がらみで何かを画策しているらしい。そこに謎の女性弁護士(コ・アラ)も絡み、一体どうなってんの?という展開。しかもかなりハイスピード。それぞれの人物の輪郭はあっさりだし、登場するも動きも話しもしなかったり、背景がわからないキャラ(特に危篤のハン父や同じく病人のマルコ母など)もあり、そのへんはもうわざとかな、って思えるほど。

正直ストーリーというよりも、瞬間を切り取りたくなるキャラ造形や銃や刃物のバトルやカーチェイス、街での追跡などのアクションシーンの面白さを追求することにより重きをおいた制作マインドにシフトされてるのかな、本作のフンジョン監督は?と感じる。でも、今作についてはマルコ演じた新人さん(三浦貴大っぽい)の新鮮さ、ガンウの巧さ、そしてなによりソノのエレガントでチャーミングな魅力が光るユーモラスなシーンの良さは捨てがたい。なんか無理やりやん?というまとめ方も仕方ないかなぁと。あれだけ出血過多のシーンを経ての不気味に爽やかで後味の良いラストも悪くない。貧乏人がめちゃくちゃなことをする金持ちをぶちのめすという痛快さはちょっとあったかも。ソノさん、ホン班長(『海街チャチャチャ』)がちょっとだけ見え隠れしてました、終盤。

しかし最後のからくり、ちょっと難しかった。複合的に騙しが発生してたってこと? もうちょっと人物減らした方が良かったのでは、と感じました。
うっちー

うっちー