うっちー

夜明けのすべてのうっちーのレビュー・感想・評価

夜明けのすべて(2024年製作の映画)
4.3
公開からかなり経ってしまったのだけど、館に観に行ってホントに良かった。素晴らしい映画だった。

PMSで新卒入社した会社を辞める羽目になった藤沢さん(上白石萌音)、パニック障害で元いた会社を辞めた山添くん(松村北斗)がたまたま同じ会社で先輩後輩として出会い、お互いのハンデを気づかい合いながら交流してゆく様を、さりげなくも温かく描く。まず、この会社が素敵だ。小さなプラネタリウムが主力商品のような町の中小企業で、社長の光石研さんも先輩社員の方たちもさりげない優しさをもっている。社長は弟さんを亡くした過去があり、その傷つきからワークショップに参加している様で、そのつながりからなんらかの問題を抱えた人を働き手として受け入れているらしい(たぶん?)。特に藤沢さん、山添くんへのさりげない配慮が温かい。

PMSのどうにもならない深刻さをうまく表現する上白石さん、社会性の無さや発作時の苦しみを体現する松村さんはもちろん、彼らの周りの人間模様(渋川清彦、藤間爽子、丘みつ子、りょうなど)も、それぞれになんらかの喪失感や問題を抱えていながらも打ちひしがれることなく淡々と前向きで、誰も彼もが突出しているわけではなく、皆がフラット。だからこそ滲み出る淡いながらも豊かな色合いというか、まるで人間タペストリーのような作品だな、と思い至った。

三宅唱監督は常に裏切らない、と一人こころに刻みました。
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