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運び屋のkanegon69のレビュー・感想・評価

運び屋(2018年製作の映画)
4.5
これはとても心に染み入る素晴らしい映画でした。クリント・イーストウッドが自ら主演、そして監督した作品。

物語は園芸家として有名だった主人公アールが華やかに表彰されるところから始まる。家庭を顧みず、常に仕事を優先し、大事な記念日や行事をすべて欠席にしてきたことから、家族から見放される。娘の結婚式にさえ出席しなかったアールは娘から一切口をきいてもらえなくなり、家族から完全に拒絶された状態に。時は経ち、インターネットの時代で自らの庭園は差し押さえられ、路頭に迷うことに。しかし90歳になるアールは人生で一度も交通違反をしたことがなく、そこに麻薬組織が目を付けた。運び屋として警察に目を付けられにくいセイフティ・ドライバーが必要だったのだ。アールは運ぶだけでいいと言われてやってみると大金を渡される。それを家族のために使うと少し人生を取り戻せた気がした。そしてアールはお金を必要としている退役軍人クラブのために組織に連絡をとり、運び屋をやる。いつしか自分がしていることに気が付くが、もはや戻れなくなってしあうアール。一方、麻薬捜査官DEAがどうにか大量で巨額な麻薬を運んでいる運び屋を探し出して摘発しようとするが、、

実際に80代で運び屋をやっていた退役軍人の話をもとに創作された映画のようです。久しぶりにみる役者としてのクリント・イーストウッド。相変わらず渋く、味があり、皮肉な言葉遣いや、無愛想な表情から心の中の繊細さを覗かせる繊細な演技が素晴らしかった。対するDEAの捜査官を演じるブラッドリー・クーパーとの掛け合いもたまらなく心に染みる。

エンディングがなんとも切なく、じわーっと来ました。「どんなに大金を手に入れても時間は買うことができなかった」というアールの言葉。確かに過ぎ去った時間は取り戻すことはできないですね。切ない余韻に心はいっぱいに占領された素晴らしい映画でした。
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