tetsu0615

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のtetsu0615のネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

なかなか楽しめたのではないだろうか?

田舎の豪邸、死んだ大富豪、くせ者揃いの家族、現れた名探偵…王道ミステリーまっしぐらな本作。視聴者は割と序盤で多くの情報を与えられるので、倒叙ミステリーのように話が進む。探偵は気づいているのかどうなのか?真実を知るものはやきもきしながらやり過ごせるのか?といった感じで話は進み、そこに絡む家族の秘密や遺産の行方、そして…

無論、情報通りの展開でないのは分かっていてそこからどんな展開が分かるのか………長い。そこまでの道のりがなかなか長い。一生懸命誤魔化す姿に笑いを誘われたり、遺産の行方を知った家族の争い、いがみ合いに笑うクリスエヴァンスを見たりと楽しめる部分はあるのだが、いかんせん興味を持続させるにはパンチ不足に思えた。(コースとしては間違ってないので不満とは言い切れないのだが)ただ、最後に探偵が本領を発揮するシーンで画面に集中してしまう辺り、やっぱりこの手の作品が好きだなと。
マルタの「嘘をつくと吐いちゃう」という飛び道具的な設定やセリフ、行動などに現れた伏線も回収し見事な着地。
誠実に良心に従って生きるのって大事だね。
「犬はその人の本質を見抜く」


世界的ミステリー作家の遺体が発見される。彼の誕生日パーティーに集まっていた家族の面々。警察及び匿名の依頼を受けた探偵ブノワは調査を開始するが、そこに絡む家族それぞれの秘密と嘘…事件の真相はどこに眠っているのかというミステリー作品。

アバンタイトルで遺体が発見されるというこれも王道ミステリーっぽいなという感じ。ここで出てきたマグカップ、ちゃんと覚えておきましょう。
前半は取り調べシーンの連続だ。刑事が質問しそれに答える家族の面々と後ろに静かに座る探偵…彼の質問はピタリと的を得て、家族の面々は自身との確執や秘密などを回想していく…
ここは登場人物や亡くなった富豪との関係、彼等のもつ秘密が画面に明かされる。この辺のテンポの良さと分かりやすさは安心して見れるつくりだなと。
明かされる事件当日の各々の動きだったり、彼らが抱える動機になりそうな秘密がミステリーとしての盛り上がりを加速させる。
そして重要なキーパーソンである看護師のマルタが登場する。ブノワとの初コンタクト。そこで彼女の「ウソをつくと吐いてしまう」というトンデモな体質が明かされる。なかなか突飛な設定だがそれほど連投されるわけではないし、最後にキチンと使ってくれるのでアリ。
ここからネタバレに注意





マルタの回想で多くの情報が明かされる。富豪との会話、間違えてしまった鎮痛剤とモルヒネ、彼女を守るための自害とミステリー作家である彼が考えたトリック…彼の想いと自身の抱えた秘密を上手く隠しながらブノワと話すマルタ。ある意味ではマルタが犯人ではあるものの、彼女を守りたい富豪のじいさんの願いもありどこか彼女を応援したくなる。アナ・デ・アルマスの魅力と彼女が演じるマルタの根が良い子な感じも好感が持てて良い。
だが、ブノワがマルタをワトソン役とした処から彼女の必死な(少し抜けた)アリバイ工作が始まる。
ちなみに暗闇に佇むブノワが007に見えてしまったのはワザと?笑
ビデオテープや足跡、ワンちゃんが持ってきた折れた窓枠…ブノワも気づいてるのやら…な感じでちょっぴりシュール。

これからも家族として支えていくよと言われ、罪悪感のあるマルタだったが、遺言書の開封で明かされた事実はそんな彼らの関係を大きく変えてしまう。遺産の全てをマルタに譲ると書かれていたのだ。家族の態度は一変し、マルタを批難する者が彼女をさらに追い詰める。
ここでやっと登場した孫のランサム。

彼の登場からまた物語は面白くなる。マルタを助けたと思ったら、マルタは正直に白状するし、脅迫文書が届いたりと新たなミステリーな要素が入り物語は徐々に新たなステージへと向かう。証拠の血液を鑑定していた研究所が放火されたりとマルタは脅迫相手に向かうが…遅い車のマルタとブノワのカーチェイスになっているようでならないでも後半割としっかりしてるカーチェイスもまたシュール。

そこにいた脅迫をしていた家政婦もモルヒネで命の危険に。見殺しにすれば自分は助かる…そんな中でも彼女は救うことを選択する。マルタの誠実さがここでもしっかり生きてくる
ブノワに正直に打ち明け、家族の前でも打ち明けるとなるが…ここで全てのピースが当てはまり、ブノワの推理が披露される。


確かに富豪のじいさんは自殺だ。薬を間違ってしまったことを隠すための自殺。それは間違いないことだ。しかし、マルタは薬を間違っていなかった。中身の微妙な違いを分かっていてちゃんと処置をしていたのだ。中身を入れ換えた真の悪人がいた。それがランサムだった。遺産相続権が無くなり、マルタに全てが相続されると聴いた彼は彼女に罪を被せる気だったのだ。入れ換えを知り、血液検査の結果を知る家政婦を殺そうとし、放火もするという悪事っぷりである。しかし、証拠はない…
ブノワの推理の披露は今までの流れから違和感がないように鮮やかにセリフの伏線を回収していき(曾祖母のまた来たのかい?など)画面に釘付けにされた。また、マルタがウソをついて(吐くのをギリギリまで我慢して)ランサムから自白を取るという展開とはビックリだ。ここで彼女のその弱点を使ってくるとは…ランサムがマルタを襲ったナイフがおもちゃのナイフというのも伏線回収(どっかで出てくると思ったんだよ!笑)
基本的にマルタが誠実に良心に従い行動したことが項をそうしている感じで報われるのも良い。ある意味グダグダでポンコツな行為をしていたが笑

ラスト、あのマグカップを持ち家族を見下ろすマルタ…良いショットだ。


終盤での伏線回収も見事だし、多分2回目見ると面白い部分がより見えてくるのだと思うのだが、個人的には2回目見るほどの求心力には欠けてしまう。
倒叙ミステリー的な部分からのひっくり返しが盛り上げ処なのかと思いきや思っていたよりもパンチに欠けた気がした。笑えるシーンもあるにはあったがコメディという感じでもなく、どこか冗長に感じてしまったのは私だけか?物語としては流れはちゃんとコースに乗っている[事件発生→取り調べを受ける怪しい家族→マルタから鑑賞者に見せられる真実→探偵にバレちゃうかどうかのヤキモキ→遺産の行方と醜い家族の争い→怪しい男の登場と脅迫→新たな事件と謎の解決]ザックリ言えばこんなところだろうか。マルタが握る秘密をハラハラしながら見守るのは良かった。冒頭の家族の紹介とそれぞれの秘密。これを部分に散りばめたら良かったかも?時系列を取り調べと現在行ったり来たりしながら。
あとは…マルタがランサムに全て話してしまったあたりかな。あの辺が納得出来ないような…でもあれがないと解決しないし…ダメだ、上手く整理出来ない…
最後に持ってかれたから結構好きな作品にはなったと思うのだが…

王道ミステリー的な作品はあまり見てなかったのかもなと改めて自覚した作品になったという部分もあったかな。

もう一度見るか検討中
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