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ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のtagomagoのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

本格ミステリを思わせる邦題(ナイフの館)、資産家の一族という舞台立てやクセの強いキャラクターなどの設定はアガサ・クリスティーの古典ミステリーを踏襲。まさしくクラシックな装いながらも真相の意外性でひねりを加えてくるあたりが素晴らしい。クリスティーを見事な形で継承したアンソニー・ホロヴィッツ著の「カササギ殺人事件」も思い出されるがそれと見劣りしないほど良く作られていると思います。この前の「オリエント急行殺人事件」よりクリスティーっぽい。これをオリジナルで脚本したライアン・ジョンソン監督凄すぎませんかね。彼は前作のスターウォーズで型破りすぎてファンから不評を買っていましたが(私もその1人)、本作では王道という型から嘘をつくと吐いてしまうキャラを用意したりなど遊びも持ち合わせて彼お得意の豊富なアイデアが随所に光る映画になっている。アメリカへの皮肉も忘れていない。

早めに犯人を知ることになりここからは古畑任三郎のような探偵の追及から犯人がどのように逃げ切れるかのサスペンスにシフトしていくように見えたところで再びミステリーに戻ってくるのが秀逸。期待通りに翻弄してくれます。個人的には良くも悪くも同じ速度で走る映画だと思っていたが、探偵役のダニエル・クレイグのテンション芸にこちらもエンジンがかかった。解決編はこうじゃないと。
外国のミステリでは登場人物の名前とキャラが把握できず見分けられないことも私はしばしばあるのだが最初に取り調べを見せることで彼らの家系図や誰が誰に恨みを持っているかなど容易に把握できた。もちろん映像が持ってる画の強さもあるだろうが。

鮮やかな幕切れを演出した実質主人公とも言えるマルタを演じたアナ・デ・アルマスが最高なのは言わずもがな、ジェイミー・リー・カーティスやマイケル・シャノン、トニ・コレットなどなどクセ中のクセを揃えてきたことも嬉しい。紳士探偵ブノワは出自が何も分からず、名なのかはたまた迷なのかはっきりしないのだがとても魅力的なキャラになったのは当然ながらダニエル・クレイグのおかげ。最初のあの画面の奥に座っているのはもしや…というところから期待が持てる。過去の名探偵たちのように愛すべきキャラになっている。これはシリーズ化してほしい。今度は純度100パーセントのフーダニットが見たい。
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