ノラネコの呑んで観るシネマ

ウエスト・サイド・ストーリーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.8
多少の設定の変化はあるが、物語の展開はロバート・ワイズ版とほとんど同じ。
しかし、はるかに面白くなり、現在性を強く感じさせる。
まず細かいアレンジが聞いている。
旧作では普通の街だった舞台が、再開発のために取り壊されつつある区画にチェンジ。
つまりジェッツもシャークスも、追い出されることが決まってる街を巡って、無益に争っている。
ジェッツのプアホワイトも強調され、ドクの店の店主をリタ・モレノ演じるプエルトリコ人の未亡人とし、両者の間に立たせる。
彼女が歌う「SOMEWHERE」によって、対立の意味が深化。
逆に警察の白人贔屓などは薄まっている。
痒い部分に手が届く、巧みなアレンジによって、本来似たような境遇にいる、底辺の人間同士の争いだという核心部分が強化され、半世紀前に書かれた物語が、現在アメリカ社会が抱える分断にダイレクトにリンクする。
しかし、本作で真に圧巻なのは、映像がどれほどのことを語れるかというカメラ演出だ。
どんな映画も、最後はカメラをどう使いこなすかで勝負が決まる。
この部分はロバート・ワイズじゃなくても、もう誰もスピルバーグには敵わない。
巨匠の技を堪能させてもらった。
ブログ記事:
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