ユーライ

ウエスト・サイド・ストーリーのユーライのレビュー・感想・評価

4.0
ミュージカルも61年版も未見、最低限の知識すらない状態で鑑賞。そもそもミュージカルについて知らないので、「適当に歌って踊って終わり」くらいの山あり谷あり具合なんだろうと思いきや、それとは真逆と言っていいほどの誤魔化しが効かない現実の暗さが根底にある。殺伐としているはずの物語をミュージカルの陽性で装飾していたはずなのに、ある一点を境にボロボロと崩れ落ちてジャンル自体が変化していくような、その暗さを支えるのがスピルバーグ十八番の暴力演出なのだが、素っ気なく、遠慮なく、何でもないように発動する暴力の様子が“不良”青年達の無軌道な衝動が生む怖さと合致していて全く明るくはなるはずがない。中盤で登場する銃が不気味な存在感を放つが、発射される瞬間の「これ本当にミュージカル映画か」と疑うような即物加減の容赦なさ。しかし、元があるから何とも言えないが、フィクションらしい分かりやすい救いや結末が欲しかった気分。ミュージカルに移行するまでに、何の脈絡も無く歌って踊り始めるのではなく、感情の高ぶりからそうさせることの前振りがちゃんとある。ギャング団の一員として認めてもらいたい、性自認が女性である人物が登場するが、出番として両陣営を中継して説明するだけのような役割に終始しており、もっと直接的に本筋に絡ませなかったのは明確に不備。ただでさえ扱うテーマが重層しているのにただ付け足しただけに見えてしまう。
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