去年、《ミュージカルの映画》企画をしてこのオリジナルを観た時にミュージカル映画の力強さを感じた。
それをスピルバーグが再びリメイク。
あの王道SFアクションの巨匠がこのミュージカルをリメイクとは一体何事か、と。
オリジナルは1961年だから、60年の時を経て蘇る。
ストーリーラインはその60年前当時のオリジナルを踏襲していて、現代の面影は一切なし。
人種のるつぼと呼ばれるNY。
そこに移民として集まって暮らし始めたプエルトリコ系。
そこをもともと地元として暮らす白人系アメリカ人。
どっちにしても、NYの場末感がチラつく貧しい生活。
そうしたNYの発展途上とは言え、まだまだ治安の悪い一角を舞台にした人種間の縄張り争いと人種差別と、そこに生まれてしまった人種を超えたロマンス。
汗が滲む男たちの力強さ、若さからくるほど走る熱、ギラギラして有り余ったエネルギー、それぞれの持つ文化、そして愛。
色んなやり場のない情熱や願望や希望や絶望や不安が、この映画と歌の中にぎっしり詰め込まれてる。
オリジナル観た時にも頭に残るフレーズ。
“Tonight〜”“〜America”。
もちろんオリジナル観てなくても「オリジナルはこうだったんだ」と思える作りだし、オリジナルを知ってる人ならそれをそのまま思い出させる世界観。
今、この作品作って古い摩擦を描いてどうしたいんだと言うのもあるのかも知れないが、逆に今この時代感を再び作り上げれたスピルバーグの力がやっぱりスゴいとしか言いようがない。
これまたアンセルエルゴートが、この時代の二枚目っぽくて良い。『ベイビー・ドライバー』の彼。身長高いし、優しいし、周りから一目置かれる本作の象徴。素敵。
マリア役、レイチェルゼグラーも、60年もの間、映画や舞台など至る所で演じられてきたこの演目の悲劇のヒロインのイメージにピッタリ。
争いは争いしか産まず、復讐は復讐しか産まず、失うものはあっても得るものはない。
それでも街が発展途上で様変わりしていき、当事者以外からも取り上げられたり、どうしたって自分達の存在価値を証明する場がなくなっていくやり切れなさ。
それでもそれぞれのアイデンティティや生活を守ろうと他から奪わまいと主張をし戦った結果の、華やかさ、力強さ、そして、悲しみ。
一度動き出した歯車はなかなか簡単に止めることはできず、何が起きても誰かが何かを飲み込んで、どこかで吐き出す繰り返し。
それが、1つのロマンスによって一気に動き出し、悲しみの果てに1つの答えを出す王道にしてこの王道の原点のような映画、再びここに。
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