Mariko

ウエスト・サイド・ストーリーのMarikoのレビュー・感想・評価

3.9
そもそも'61の『ウエスト・サイド・ストーリー』(舞台は観たことなし)、バーンスタインによるスコアはどれも素晴らしく大好きなんだけど、作品としてはそこまでハマり切れなかった。文学として古典中の古典である『ロミオとジュリエット』を今こういう形で見せられてもなあ…と初めてテレビで観た子供の頃からそんなイメージだったので。その古典が更にミュージカルの古典となっている21世紀にリメイクする意味ある?? と正直思っていたので、興味はありつつ劇場に行く機会を逸し続けていたところ、なんと早々に!ディズニー+にきてたので、「もう見せていただいちゃっていいんですか?!」と、ありがたく鑑賞。

むむむ、意味あった!!!

奇を衒わず、ストーリーもオリジナルに忠実に作りながらも、その演出と撮影技法で「映画とはこういうことだ」と訴えてくる、とてつもない説得力を持たせたのは流石スピルバーグ、これはほかの誰にもできない所業。曲としてはものすごく好きなのに作品として今ひとつ浸りきれない最大の要素であるミュージカル特有の演出も相当いい感じのバランスに来ている。

光と影の見せ方、特に俯瞰からのショットで見せる影の美しいこと!高低差を存分に活かした構図は、冒頭からエンドロールに至るまで息をのむ迫力だった。
そして「相手を抑止するための銃だ」みたいなセリフを聞きながら、現在も「抑止力としての核」が日々話題になっていることを思うと、シェイクスピアの時代から60年代のブロードウェイ、ハリウッドを経て現代に至るまで人間がやってることの本質があまりにも変わっていないことにため息をついてしまうなど。

スコアが極上なのは(アレンジもまた、オリジナルに忠実で素晴らしかった)言うまでもなく、またストーリーもほぼそのままなので、そこに関しては長年の感想が覆ったりはしないのだけど、リタ・モレノをこう使うとは!と、特に終盤ではそれにやられたかな。
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