chanmasu

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのchanmasuのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

凄いですよ。事件現場に居合わせているかのよう。エンタメ的面白さはかなり削られており、面白さはあまりない。そこにあるのは忘れ去られていた、白人たちによっていた土地を追われ、資産さえも管理され、同じ1人の人間として扱われず財産目当てに殺されてゆくネイティヴ・アメリカンたちでした。
本作は原作とは違いアーネストの目線で描かれている。目先の欲に目が眩んでしまう卑近で愚かしい、けれども彼と線を引くこともできない気がする。思わず沈黙のキチジローを思い出した。とはいえ流石に行き当たりばったりで叔父の言いなりにオーセージ族の殺人に加担してゆく様はただただ気持ち悪い。
驚くほど幼稚で、悪事を一応認識してはいるがそれを理解する事を拒んでいる。それ故に犯罪の片棒を担がされてしまう彼はなんとも愚かしく、哀れに映る。デニーロのおじさんは一見理解ある白人に見えて他人を金づると利益をもたらす為に利用できる道具としか思っていない恐ろしいジジイ。しかも裏の顔を持っているというよりは裏の顔と善良な顔がくっ付いて離れなくなってしまったよう。
オーセージ族は死んでしまうしお金をもぎ取るべきだと唱えながら事件の捜査をしているふりもしていて、こいつも他人に良い顔をする事しか考えていない(でも自分の欲求が最優先)という理解に苦しむ人物。
平坦な物語の種明かしで最後、ラッキーストライク出資のドラマ場面へと移行する。
この語り口も頷けると同時にスコセッシ本人も登場。あくまで白人目線でありながら、ネイティヴアメリカンへの敬意もかなりバランスをとって描こうと苦心していると思えた。
それなりの長さは感じつつ、3時間半には感じないレベル。これはテンポのいいエンタメではない。昔起こって忘れ去られていた衝撃的な殺人事件の一部である。この事件の全貌を描くにはまだ尺が足りないだろう。
また、葬式の場面のカメラで周りの人物がこちらをみてくるシーンは非常に印象的だ。
白人たちの眼差しからオセージ族に向けられていた眼差しがなんとなく体感できた。
リリーグラッドストーンにはオスカーをとって欲しいと思える名演でした。
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