『草の葉』に続くこの作品では、ついに「死」のテーマが大きく扱われている。登場人物が死ぬシーンが出てくるのはこれまで観た限りではこの作品が初めてではないだろうか。主人公が滞在する川のそばに建つホテルという場所も暗示的であり、同じ場所なのになかなか息子たちに会えなかったり、彼らが部屋に来ることを頑なに拒んだり、はたまた天使のような美しい女性たちと出会ったりする、この世とあの世の境界のような場所に思えてくる。モノクロームの映像がまた非現実感を盛り立てている(雪の白さがまた効果的だ)。
ただ重いテーマを扱いながらも暗い感じはせず、奇妙で不思議な空気に満ちている。サインをねだるホテルスタッフ、ファンシーなぬいぐるみ、「ときめかなくなった」社長、そしてきわめつけは詩人が女性たちに読む「イカの世界」の詩と詩と並行してぼんやりと登場する青年‥ それらをどう読み解けばいいのか悩ましいが、それがホン・サンスなのだと妙に納得してしまう。それも不思議だ笑。難解ながらもとても味わい深く観た。
キャストはいつものホン・サンス組なのに、いつ観ても新鮮な人選に思えることもホン・サンス・マジックだ。キム・ミニはここでもフレッシュな可愛さに溢れている。久しぶりにユ・ジュンサンが出てきてうれしい。