たつなみ

殺さない彼と死なない彼女のたつなみのネタバレレビュー・内容・結末

殺さない彼と死なない彼女(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

主演が桜井日奈子と間宮祥太郎、そしてこのジャケットと、イメージはいかにもよくあるラブコメっぽいが、『恋愛映画』という陳腐なカテゴリーに入れてはいけない位の素晴らしい傑作だった。

これは4人の少女たちが『大切なもの』を手に入れるまでの物語。
苦しんだり、悩んだり、傷ついたり、失ったりしながら彼女たちが求めるものに辿り着く姿に感動の涙が溢れてくる。

それぞれのエピソードが断片的に語られながら、お互いが微妙に関わり合う編集は見事という他ない。
(何となく『桐島』を思わせる構成)
不器用で時に不自然にも感じられる様なセリフ回しも、登場人物達の「本当の言葉」を逆説的に演出するスパイスになっている様に思える。

交錯する3つのエピソードのうち撫子と八千代くんの物語が1番印象に残った。
なぜ撫子はそこまで八千代くんに『好き』と言い続けられるのか?
なぜ過去に囚われる八千代くんに『未来』を与えてあげようと思えるのか?
なぜ八千代くんを抱きしめて『大丈夫よ』とまで言ってあげられるのか?
途中でこの撫子が天使すぎると違和感を感じていたが、その理由が最後の最後で明らかになる。
まさかそこで鹿野のエピソードが絡むなんて!
なんというカタルシス!

小坂を失っても『死ぬ』という安易な選択を選ばず、『大好きな小坂がずっと見守ってくれている未来』を信じる選択をした鹿野。
その鹿野が撫子に『未来』を与えてあげることで、撫子は八千代くんと結ばれる。

桜並木の中を小坂の存在と共に歩いてゆく鹿野の後ろ姿に勇気を貰えた気がした。

人は独りじゃない。
必ず側に寄り添ってくれる人は居る。
辛いことがあっても大丈夫。
だから未来の話をしようぜ。