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ニュー・カントリーのもたのレビュー・感想・評価

ニュー・カントリー(2000年製作の映画)
4.3
思いがけず素晴らしい作品に出会った。ソマリアのマラソン元代表の少年、「イランに送還されれば死刑か、少なくとも20年」と語る中年の男、元ミス・スウェーデンだが、今ではポルノ雑誌のモデルなどをして生活している女の3人が、オンボロ中古車に乗って自分たちの居場所を探す。社会の不寛容に対する静かな怒りが込められている。おそらくビデオカメラで撮影され、元々4時間ほどのTV映画だったものを130分に縮めたらしいが、ところどころ手持ちのアップが乱雑に思えたり、再生速度を変えているカットが出てきはするものの、細かいが的確な編集に驚いた。強制送還のなか、カウリスマキ映画のようにレコードを使った演出で、部屋の内と外で音の反響を変えたり、止めることでシーンの切り替えを示したりと、芸が細かい。逃走劇のサスペンス、恋愛やカーチェイスや細かな伏線の回収など、エンタメ的な要素も完成度が高く面白いが、主人公たちはもちろん、旅の途中で出会う人物まで、しっかりと奥行きをもって描写されていて、内面の善し悪しに関わらず、魅力的に見せる。もう一度みたい。
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