ハル

トリプル・フロンティアのハルのレビュー・感想・評価

トリプル・フロンティア(2019年製作の映画)
3.6
退役した軍人トム(ベン・アフレック)が昔の仲間のうまい話に乗ることで混乱に巻き込まれていくお話。
『タイラー・レイク』を観ていた影響でおすすめに上ってきたわけだけど、評判ほど悪くは感じなかったな。
ただ、元々ベン・アフレックが好きなのでバイアスかかっているかも。

当初の依頼は怪しげな組織の監視のみ。
一週間で各自約200万円、流石に目が眩む昔の戦友五人組。
それだけ行い、報告したら終了…だったはずが彼らは欲を出してしまう。
やはり、トラブルはこういう時に起こるもんだ。
「このレベルなら自分達だけでミッション・コンプリートできるんじゃないか?」独自で敵組織の壊滅&約100億の強奪を企む。

でも、彼らは元々一流の軍人だったわけでなんとあっさりそれを成し遂げてしまう。
相手の警備がゆるゆるだったこともあり、ほぼ瞬殺。
そして、ここからが本作の醍醐味。
欲の怖さが具に描かれていくお時間。
想定では100億円程度だった隠されたmoney(十分過ぎるが)
しかし、実際に見つけたのはその数倍。
案の定、揉めだす五人。

限界まで持ち逃げしたいトムVS当初の予定通り作戦を遂行したい他の面々で言い争いが勃発。
しかし、トムの「俺は想定外の事態に備えて時間を多くスケジュールしている!だから多少時間がかかっても無問題!!だからもっと盗みたい!!!」という悪魔の引力に引き寄せられ、彼らはひたすら金を盗む。
はい、破滅のはじまりです。

そこからは脱出を予定していたヘリがお金積みすぎの重量オーバーで墜落してしまったり、想定外の戦闘がいくつも発生して人を多く殺す羽目になり…結末も自業自得感がたっぷり。
だけど、決して馬鹿にはできない怖さも内包されていた。

元々、トムは乗り気じゃなく一番慎重だったはずなのに…いざ現ナマを前にした途端の取り憑かれよう。
これこそ、現ナマの魔力だ。
こんなふうに俯瞰した立ち位置からレビューしている自分だって目の前に数十億積まれたら悪魔に魂を売るかもしれない。
金こそ真実の姿を映し出す“ラーの鏡”なのかもしれないね。

投資をやる人なら分かると思うけど、人は利得が絡むと当たり前の判断をすることが出来なくなっていく。
アンカリング効果や損切りを躊躇する感覚、一度経験すればその恐怖感や心理面が及ぼす影響がどれほど人を狂わすか理解できるはず。
含み益は幻、利確して入金されるまでが遠足。
何事も引き際が最も大切だということをふかくふか〜く教えてくれる一作だった。
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