矢吹

フットライト・パレードの矢吹のレビュー・感想・評価

フットライト・パレード(1933年製作の映画)
4.3
最高のミュージカルコメディ。
ビバ、アトラクションだ。
こんなにもハッピーな映画はそうそうない。
そういう意味ではほぼディズニー。
劇作家が、トーキーの登場によって
廃業まで追い詰められるも、
様々なアイディアで奮起し、再びの成功を目指す物語。そのバックステージを描く中に恋愛のゴタゴタやお金の問題、競合他社との勝負なども入ってくる、正統派な映画なのです。
が、このストーリーは、前提として、
劇の復権を目指す物語といいながら、作品としては完全に映画の暴力的なまでの美しさ、素晴らしさを見せてしまうものなのです。
劇として全く演出してないもの。
まず、オープニングロールからめちゃくちゃ素敵。立体感のある映像から、人物紹介まで、完全に夢の世界への入り口として作られています。
本当に映画館で見てみたい映画だ。
話のほとんどは事務所兼稽古場?で行われるんだが、働く人々、オーディション、舞台役者。 
作品に出てくる人の数がかなり多く、カメラの中の忙しなさが半端じゃない。
そして、みんなめちゃくちゃ生き生きしてる。
恋する助手、バリバリな演出家、仕事人間から花開く女優、胡散臭い女、元嫁、スパイ容疑のあるスタッフ、金に汚いオーナー、裏口入社のぼっちゃん俳優、文句ばかりのダンストレーナー
単純にパワフル。かつ、テンポも最高。
音楽もめちゃくちゃいいし、良い意味で全く緊張感のいらないストーリー。楽しいだけ。
なんか落とし穴があるんじゃないかと疑うほどに、サクサク話が進んで、そのまま終わります。が、個性的なキャラクターの中を流れるように進む物語は退屈もしないですし、
なによりも、肝は劇中劇なのです。
圧巻のレビューパート。
1930sにおける幸せ全開の「ハネムーンホテル」
女性的な美しさが輝く「滝のそばに」
男性的な力強さを押し出す「上海リル」
映像にしかできない表現の連続。
レビューは基本的に完全に独立した劇中劇であり、よくあるミュージカル映画のようにストーリーの中で展開するものじゃないから、重めのメッセージ性とかも特にないし、それはもう訳わからん演出もたくさんありますが、逆に、ここでは、何も考えずに、ただ綺麗な歌と音楽と映像に身を任せていいんですよ。
「上海リル」では大トリとして、ストーリーもちゃんと踏襲してますし、練習の風景やキャラクターの変化などのドタバタがあるからこそ、あれらのレビューは良いんだってのはもちろんそうなんだけどさ。集団でのダンスなどが若干不完全なのも味があるってもんだしな。
んで、最高の終わりかたをしてしまう。
よくわかんねえけど終わり良ければ全てよし。
みたいな感じ。心強い。ただただ楽しい。
矢吹

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