原作「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」は未読です。
2011年3月11日に発生した福島第一原発事故を題材に、
当時の現場の対応の様子を再現した作品。
序盤、地震が起こってから、
想定外のことが重なり被災レベルが深刻になっていくまでは、
当時の状況が臨場感、緊迫感をもって再現できていて、
なかなかの良作なのではないかと思いました。
そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。
(当時の記憶が鮮明によみがえるので、
思い出補正的なものもあるかもしれません。)
序盤について、そういうふうに思えたのは、
薄っぺらいウェットな演出が入り込む隙がなかったから・・・
ということにだんだん気付かされていきます。
監督がテレビの演出家出身の人であることが関係しているのかはわかりませんが、
お茶の間向け日本のテレビドラマにありがちな演出で、
台詞に頼り過ぎで、演劇空間になっちゃてるんですよね。
原発相手に悪戦苦闘しているときは目立たないのですが、
落ち着いた場面で、どうにもわざとらしい演劇が垣間見えてしまう。
お茶の間向けドラマならそれでもいいのですが(よくはないが)
題材が題材だけに悪目立ちしてしまうのですよね。
被災状況の再現はよくできていて、見る価値は高いと思いますので、
なおさら残念感があります。
評判が低いからと言って、それを理由に見ることをやめないで欲しい作品ですね。
このような感想を持つ作品は珍しいです。
東電本社の指令役をやってた役者はなかなか印象的で悪くなかったです。
総理役はやり過ぎかな。
前者まではエンタメ的演出としてOKで、
後者まで行ってしまうとさすがにリアリティを感じない線引きでしょうか。