回想シーンでご飯3杯いける

ホテル・ムンバイの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
2.8
実話映画を観ると、事実との齟齬が気になるので苦手。特に政治や戦争を題材にしたものは、作者の国籍や生い立ちに作風が左右されてしまうし、それを鵜呑みにしてしまうと、問題を曲解してしまう危険性もあるので、いつも鑑賞を後回しにしている。

本作に対して「演出は少なめ」という評価が多いようだけど、僕には「演出が少ないように見せる」演出が施された映画だと思えた。実際の映像に似せた荒い動画の挿入や、敢えてヒーローを置かないストーリー。社会派の実話映画が好きな人が望む要素を実に上手く取り入れている。

逆に言えば、いかにも事実をそのまま描写したように見せながらも、やはりどうしても作者の意図が入ってしまう。これはテロを題材にした映画のほぼ全てに共通するのだが、犯人の人物像や行動原理は深く触れていない。宗教の怖さや洗脳と言ったフレーズがふわっとイメージできるものの、例えばそれって太平洋戦争時代の日本兵にも似たような部分があったわけで、それらを絶対悪だと決めつけた先に、テロ根絶の実現があるとは思えないのだ。

手法としては文字通りグランドホテル形式で、各部屋で息を殺している客を交互に描く事で、ホテル全体に迫る恐怖を上手く描いている。また、予想外にアクション映画要素が強かった事にも驚いた。螺旋階段越しにマシンガンを乱射するシーン等は、この題材ならではの演出と言えるだろう。