みんと

ホテル・ムンバイのみんとのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.1
こう言った出来事から目を逸らしちゃいけないのだけれど、やはりとても直視出来ないくらい衝撃的だった。

2008年、インドの国際都市ムンバイで発生したタージマハル・ホテル襲撃事件。
その衝撃のテロ事件に遭遇した宿泊客と、彼等を守り抜いたホテルマン達の勇気ある行動を実話の重みと説得力を持って描かれた今作品。

まるで持続的な緊迫感の中に放り込まれ、逃げ場を失い いつ何時殺されるかも知れない恐怖を体感しているかのよう、、、

観る側を圧倒する死の描写は余りにも突然で当たり前のように淡々と描かれ、かえってテロの残忍さを浮き立たせていた。過激なアクション映画より怖い作品となっていた。

日本では現実味とか実感に薄いテロの恐怖。この類の事件はつい性善説のもと考えてしまう自分が居て、負の環境が思考が貧困が越えてはいけない一線を犯人らに越えさせてしまうのではないかと。

まだ幼さが残る青年達のある意味純粋が故に起こした事件の大きさとまるで不釣り合いとも感じる残忍さがこう言ったテロ犯罪の恐ろしいところで。

自分の手を汚さず他人の弱みや心の隙間に或いは宗教観にまでつけ込んで事を進める首謀者の存在。宗教(神)と言う絶対的心の拠り所を盾に洗脳し、非人道的な行為に正当性をも持たせる見えない黒幕の正体のとてつもない恐ろしさ。

勿論テロ自体を擁護する余地など決して無い。なのに躊躇ない殺戮行為と純粋に信じて疑わない若者達との違和感がどうしても拭えないのも事実で、、、

こう言ったテロを扱った作品の殆どは犯人像に輪郭を持たせることなく描かれ、文字通り“敵”或いは“悪”として捉えられる。

今作での違和感はきっと犯人側を描く割合が圧倒的に多い事も起因とするところで、
故に“悪”を前提としながらも、観終わった時ふと犯人達側にも心を持ってかれる感覚を自覚せずには居られなかった。

通して桁外れのリアリティに圧倒され、普通の人々の日常が突如として失われる恐怖を味わい、そしてそんな中でもホテルマンの仕事を全うするプロ意識と勇気、何より自己犠牲の精神には激しく心を揺さぶられた。

万全のコンディションの時に観ようと決めて今に至ったけれど、やはり観てよかった。観るべき作品だった。
みんと

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