金春ハリネズミ

オオカミの家の金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.6
すごい映画だ。

南米はチリ🇨🇱の複雑な歴史的背景が産み落としたアニメーション。
主題となる「コロニア・ディグニダ」その扇動映像としての"程"を持った、ある種モキュメンタリーな意匠を纏った一本です。

極東の島国に居る私からするとチリの政治は正直不勉強で、難しいことはパンフレットやいろいろを後でなぞるとして、
この作品がやっぱりすごいのは、映像の持つ説得力ですよね。

所謂ストップモーションアニメと聞いてイメージするそれとはずいぶん違った仕上がりでした。
ミニチュアサイズのモチーフを動かして動かしてするわけではなくて、等身大の部屋全体を文字通りふんだんに活用します。

部屋の壁に遠くへ繋がる通路の絵を描くとそこにはまぁ奥行きある通路が生まれるじゃないの。
「騙し絵」を使いこなした空間構築、多次元空間のトリップ映像に舌を巻きました。
これはほんま凄いです。

とにかくいろんなアイデアが余すことなく映像に詰め込まれてますから、1秒先の展開すら読めません。
なんでもありの世界にこっちは翻弄するばかりです。
それらに加えて本作は「ノーカット」のフリをさえするわけですから、劇中のテンション(緊張感)がずーっと持続するわけです。
油断できないわけです。

しかも、撮影現場自体を一つの表現作品として展示していたとまで言うわけですから、あゝこれはあっぱれということですな。

とにかく強烈な映像体験をしたことは間違いないです。
本作と併映される「骨」(21年)
も相まって、劇場に不穏な、それでいて好奇心をくすぐられるような、とかく危ない空気が漂っていました。

三連休中日ということもありますが、観客もいっぱいで嬉しかったです。