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人間失格 太宰治と3人の女たちのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

2.8
太宰治(小栗旬)と本妻美知子(宮沢りえ)と太田静子(沢尻エリカ)と山崎富栄(二階堂ふみ)
そして太宰が『斜陽』→『人間失格』を書き上げるまでの話。

静止画だと絵になる場面はいくつもあるけど、映画だと時々『何でこの絵面?何でこの音楽?』という監督への疑問を毎度毎度何処かで感じるところがあるのですが、この作品でも変わらず……ただこれまで観てきた監督作のうちではビビッドな色彩が抑えめだったのは良かった点。
ただ花に頼り過ぎてる感は今作でも。

『人間失格』を執筆中の太宰の姿を映し出すシークエンス。
演劇の組み舞台を解体しているような映像に、スカの音楽が乗ってくる……。
自分にはこの組み合わせの良さが分からない……。

取り敢えず。
小栗旬さん、好演でした。
女性を宥めるときの仕草、柔らかい口調で、首筋から頤を大きな手のひらで包まれて懇願されたら堕ちますね……。
(そもそも太宰の容姿だけではなく作家としての才能や名声、破滅的な男であることも分かったうえで接触してくるのだし)

あとは、宮沢りえさん。
太宰の本妻という役柄で、夫は派手に遊ぶ影で、子供と生活に追われる地味で忍耐を強いられる女性でしたが、芯の強さと太宰の本質を悟っている聡明さがみえて良かった。

坂口安吾が藤原竜也さんで、フジタツでした……フジタツパワー……。

退廃的で無頼で背徳さを纏う男、女性と自死するという形式での死への衝動を持つ男……という割に、彼女らとの欲動の描写があまりエロスを感じなかったなあ。
執筆に苦悩する太宰+それを支えた女達という図式に、恐らくは愛欲も縦糸に盛り込まれていると思うのですが、圧倒的に何か足りない。

ジャケットの小栗旬さんや血反吐出してたり酩酊してたりする小栗旬さんが一番エロいってどういうこと……と思いつつ観てたり。
唯一、二階堂ふみさんが頑張っておられましたが、それでも自死を背景にした男女の睦あいってもっと本能的なモノだと思うけど、監督の演出は『美しさ』優先でいまいち響かず。

気になったのは執筆中の手が左利きだったこと。太宰本人は右利きだったと記憶してるので、まあこれは、名前と関係性を借りたフィクションですよってことなのかーと。

色悪な小栗旬さんを堪能するには良い作品でした。