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人間失格 太宰治と3人の女たちのkassyのレビュー・感想・評価

3.3
太宰治の恋愛模様を中心に描いており、自伝的小説である人間失格を冠しているものの、人間失格ではなく人間失格を書くまでの太宰治のお話である。

蜷川実花監督らしい色彩とアート感覚に溢れ、1940年代の景色を艶やかに描き出している。
特に太田静子のパートが一番イキイキと演出しているような気がする。小説家でいう筆が走るような、想いがかなり込められているのではないかというほど、沢尻エリカは悲壮感なく美しく撮られている。
一方で、小栗旬もまた美しく撮られており、どうしようもない男ではあるが魅力のある男を色気たっぷりに、またひどく哀しい男でもある太宰治を滑稽なほど色んな表情で演じている。喀血のシーンは見ているこちらが苦しくなってくる。

ただ全体的にトゥーマッチな為、メリハリがなく見ているとだんだん疲れてくる作品だ。特に音楽が全くあっていなくて、うるさく感じるほど。エンターテインメントにはなっているが、文学の香りが画面からあまり滲み出てこないのが残念だ。
あまり語りすぎず滲み出てくるような侘び寂びが欲しい。
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