Inagaquilala

人間失格 太宰治と3人の女たちのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.2
期待が大きかっただけに、かなり残念な作品になってしまった。女性監督ということで、死に近づいていた太宰治の周囲にいた女性たちを、それぞれクローズアップしているのだが、そちらにドラマが向けられるあまり、肝心の太宰の人間像が見えてこない。太宰治という作家を、まず描かないことには、この「3人の女たち」の内実には入り込めないのであるが、そこがどうも疎かになっているような気がする。意匠や美学だけでは、この作家とそれをめぐる女性たちを描くのは難しい。表面をなぞるのではなく、3人の心の葛藤にもっと踏み込まなければ、このデカダンスに満ちた太宰を描くことは難しい。キャステイングも豪華なのだが、あまり役には合っていないような気がする。かつて太宰の小説を集中して読んだ人間としては、ほんとうに肩透かしな作品だった。
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