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ジョジョ・ラビットのfujisanのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.0
少年ジョジョの目から見た戦争の世界。

もともと、動物ものと子どもが主人公の映画は苦手なので、面白い!と聞いていながらも観ていなかった映画でした。

またMCUものはほとんど観ていない自分にとって、タイカ・ワイティティ監督って実写版「AKIRA」を監督するはずだった人、ぐらいのイメージ。

そんな中、映画冒頭、ビートルズの「I Want to Hold Your Hands」でノリノリのヒトラーがタイカ・ワイティティ監督自身だったっていうところにまず驚き。

また、ヒトラーの少年親衛隊であるヒトラー・ユーゲントの視点から、しかもブラック・コメディとして描く切り口に、まさかまだこんな切り口があったのか、と思わせられた作品でした。



本作の特徴は、映画の中で描かれているもの全てが『少年ジョジョの目を通して見えている世界』であること。

少年の世界だからヒトラーも普段遊ぶ友達の一人だし、手榴弾の爆発を受けた自分の顔だってちょっと擦り傷がついた程度(周りからは、『何だその化け物みたいな顔』って言われていましたね)

そんなジョジョにとって、ユダヤ人は宇宙人と同じ位置づけの存在でしたが、隠し部屋から現れたユダヤ人の少女は、自分と同じ人間の姿。

ヒトラー・ユーゲントでもなく、母親でもなく、ドキドキする年上の女の子との出会いをきっかけに大人になっていく少年ジョジョが微笑ましく、頼もしかったです。

-全ては少年の目を通して見えている世界

本作を観て思い出したのが、ショーン・ベイカー監督の「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」。

シングルマザーに育てられる6歳の少女ムーニーの視点で描かれたこの映画では、ディズニー・ワールドへ続く道路脇に建つ、安っぽいピンクに塗られた、自分が住む格安モーテルだって夢の国の一部です。

「フロリダ・プロジェクト」と本作は、どちらもシングルマザーに育てられているところや、映画のカメラ位置が子どもの目の高さで、大人は腰から下しか映らないところなんかも同じ。

それにまた、最大限の愛情を注いでくれる最愛の母親との関係も同じになっていってしまいます。

「フロリダ・プロジェクト」のラストシーン、6歳のムーニーは、友達と二人で夢の国、ディズニー・ワールドに飛び込んでいきます。

子どもの目線で見上げるディズニー・ワールドの世界はまさに夢の世界。貧困から一瞬に切り替わるエンディングは、”ファンタジーエンディング”とも言われました。

本作の終盤でジョジョもようやく終戦を迎えることになりますが、終戦の瞬間、ジョジョの目の前には何が広がっているのか。そこが見ものの映画でした。



感想:

ジョジョに無償の愛を注ぐ母親(スカーレット・ヨハンソン)をはじめ、無愛想な軍人ながらジョジョを見守るキャプテン・K(サム・ロックウェル)、トーマシン・マッケンジー演じるユダヤ人の少女、まさに名優の共演という感じでした。

でもそんな中で私が一番好きだったのは、ジョジョの友達、ヨーキでした。

ジョジョの顔がモンスターのようになっていようが、うさぎ(ラビット)のように訓練から逃げ出そうが、ユダヤ人を匿っていようがまったく態度が変わらず、出会うと必ず『ジョジョ!』ってハグをする太っちょのヨーキ。

最後、紙製のヒトラー・ユーゲントの制服を着て首都防衛に向かう姿にフラグ感を感じてしまったので、殺すなよこら!😡って思いながら観ていました。。

最後に:

軽い気持ちで観始めたものの、中盤の一撃から手に汗握る終盤まで、監督が撮るドラマチックな展開に引き込まれた作品でした。

映画中盤でのショッキングなシーンに挿入された、建物の屋根だけが次々に映るシーン。屋根の出窓がまるで目のように見え、ジョジョ、お前らのことは見てるんだからな、と言っているようで、とても怖かったです。

笑いと感動が両立しているうえに、戦争の怖さもしっかりと含められた、タイカ・ワイティティ監督の高い手腕を感じた作品でした。




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