しゅう

新聞記者のしゅうのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
4.0
序盤、シム・ウンギョンの同僚達が語り合うシーンが余りに薄っぺらで記者としての年季や力量が全く感じられず、この調子で単に現在の政治状況を戯画化しただけの再現ドラマを観せられるのでは?と危惧。

だが、実際は映画タイトルとは違い松坂桃李演じる内閣府付きの若手官僚の苦悩と葛藤が物語の中心で、シム・ウンギョン演じる新聞記者はあくまでそれを助ける役回り。

また、この映画では巷で語られている様な"現政権への糾弾"では無く、もっと普遍的な"日本における組織と個人の在り様"が描かれている。

映画内でも語られている様に、同調圧力の強い日本では所属する組織のルールや方針に異議を唱えるのはそもそも困難で、更には組織の現状維持を望む管理者達は異議の理非を問わず声を上げた者を"組織の和を乱す異端者"として排除しようとする。そして、一度異端者のレッテルを貼られて放逐されれば、他のコミュニティからも危険分子として敬遠されて孤立せざるを得なくなる。

その意味では、この映画が本当に糾弾しているのは、ひたすら現状維持を望み、映画ラストでの松坂桃李のような正当な声を上げた者を我関せずと遠巻きに眺めて、孤立無縁の絶望へと追いやってしまう一般大衆の方だと感じた。
しゅう

しゅう