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失踪のアキのレビュー・感想・評価

失踪(1993年製作の映画)
3.0
オリジナルの「ザ・バニシング」はキューブリックが3回鑑賞したうえ「これまで観たすべての映画の中で最も恐ろしい映画だ」と言わしめたのだそうだ。そのうえ『サイコ』(60)、『羊たちの沈黙』(91)、『セブン』(95)、『ゴーン・ガール』(14)を超えるとまで称されるサスペンスの傑作だというのだから、否が応にも期待は高まるってなもんだけど、ハリウッドリメイク版の此作を鑑賞したところ、あまりにシンプルな閉じ方にズッコケてしまったってのが正直なところだ。

ってかね、いや…あの…キューブリックよ…たぶん貴殿が未だかつてない恐怖を感じたってのはおそらくは○でありながらその実○だった的な落差のある墜落だよね…しかしこの程度のものは2019年の御代にあってはもはや各種のTV番組でも度々とりあげられ済みで、○がギブスをして弱さを演出するのも、米のサイコパス・テッドバンディの手口からインスパイアされたものだと丸わかりである。あまりに手垢がつきすぎてるんだよ。結末が驚愕との触れ込みも残念ながら目の肥えた映画フリークにとっては別段クソほどの驚きも提供されないよね。(あるいは驚きは元より志向していないのか!?)

僕が期待しすぎたってのもあるが、やはり時代なのかな、同じ監督さんであるし今週公開の「ザ・バニシング」がこの「失踪」を越えてくるなんてことはないだろうから、あえて1300円払って鑑賞するほどの作品ではないと断じざるをえないか…。もっとカルト的に漂わせる魅せ方なんていくらでもあると思うんだけどね…

例えば彼氏が個人で3年ずっと彼女を捜索しているという設定は聞くからに妄執の臭いを立ち込める余地のあるわけだが、しかし此作はその辺無頓着で全くもって深めようとしない。○の異常性を立ち上げることも十分可能なのに、てんでほったらかしなのである。あるいは忽然と姿を消したサンドラブロックの側面にしろ他にもっと作品全体を大胆に煙に巻くこともできた要素であろうに、しかしやはりそこも完全にスカスカの素無視である。

原作がそうなんだからと言われれば返す言葉もないけども、あまりに成長可能な原石が満たされているからついつい指摘しちゃうよね…結句は研磨されずに原石のまま終えてしまうのはあまりにも惜しい作品ではあるよ。

というわけだから、比較対象として列挙された『サイコ』『羊たちの沈黙』『セブン』『ゴーン・ガール』を越えているかについては、僕はほとんど明確な力強さでもってNOとクールに一刀両断させていただきたい。

*総じて丁寧に作られてはいるので3点デス。
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