荒澤龍

行き止まりの世界に生まれての荒澤龍のレビュー・感想・評価

3.9
・人口減少と貧困と暴力。他人事ではないリアルが映し出されていて、綺麗に作られたフェイクなリアルではないのが余計に肉薄してくるものがあった。
・映画の舞台は米国だが、日本でも同じことが起きているし、今後その流れはより加速していくだろう。
・雇用がなくなると人口が減る。優秀な人間から流出していく。彼らが移動できないのは、移動したその先での不安が強いから。その不安は彼らの成功体験の少なさに起因している。スケートボードに打ち込むことによって成功体験を積み重ねようとしているのかもしれない。

・大人になりたくない。先は考えないようにしているという言葉が印象的だった。未来を考えられるのは現状にある程度余裕があるからだ。
・自分の辛い過去や苦い体験を振り返るのは勇気がいるし体力も使う。辛いことを追体験することにもなるから目を背けてしまいがちだけど、そこに向き合って、清算しなければ前には進めない。この映画が彼らにとってそういうヒーリング効果があったから、不器用なりにそれぞれ前に進めているのだと思った。

・彼らは男社会の典型だ。身体のケアをする男はナルシストみたいな呪いが根強くある。感覚をにぶらせることと男性間の競争関係はセットである。派手さや強さのアピールは、虚飾のものでそれは彼らの中の脆弱な部分がそうさせている。他に突出した部分がないから悪目立ちすることで存在意義を確認している。ドラッグ、酒、女、暴力など。
・彼らは過激や痛みを求めた結果、喧嘩なしには関係を維持できなくなり、無意識下で喧嘩の火種を探すようになる。黒人自虐はボディーブローのように自己を蝕む。

・加害者の涙ってずるい。
荒澤龍

荒澤龍